この記事では、「なかんずく」と「よしんば」の違いを分かりやすく説明していきます。
「なかんずく」とは?
「なかんずく」とは、数あるものの中でも、その中でもとりわけ、という意味です。
漢字では「就中」と書いて「なかんずく」と読みますが、日本語では漢字で表記することはほとんどありません。
「なかんずく」は古い言葉で「就中」は漢文での表記になります。
これを漢文訓読して日本語の文法で変換すると「中に就く」【なかにつく】という意味の「なかんづく」になります。
「づ」が「ず」に変わり、現在では「なかんずく」が使われるようになりました。
「中に就く」という言い回しには「中から選んで、その通りにする」という意味があります。
つまり「なかんずく」は、ものが集まっている中からどれか選び出して決めることを意味しています。
また「特に気に入ったものを選び出す」というニュアンスが強調されています。
類語には「とりわけ」、「ことさら」、「特別に」などがあります。
「なかんずく」の例文
・『私は果物が好きだ、なかんずく桃には目がない』
・『歴史の中でもなかんずく中国史に詳しい』
「よしんば」とは?
「よしんば」とは、もしそうだとしてもという意味です。
「もしそうだとしても~だろう」のように、実現する可能性が低いことを仮定する言い回しになっています。
「もし~ならば~だろう」と肯定的な仮定をするのではなく、常に逆説的な仮定に使われるところが特徴です。
これは古くから使われてきた大和ことばのひとつで、漢字を使う場合は「縦しんば」と表記します。
「縦しんば」は「縦し」【よし】と接続助詞の「んば」からなる言葉です。
「縦し」は「万が一、~なら」と仮定する意味合いがあり「んば」は「~ならば」と仮定する役割があります。
「縦しんば」自体は「もし~ならば」という意味を持つということです。
実際に「よしんば」を使う場合は、その後に結果を否定する仮定形の「~ないだろう」を組み合わせ、「よしんば~ないだろう」と表します。
そうすることで「もし~だとしても、~ないだろう」といったように、実現する可能性の低い結果を予測するニュアンスが生まれています。
類語には「万が一」「仮に」「最悪の場合」などがあります。
「よしんば」の例文
・『よしんば大雪が降ったとしても、休校になることはないだろう』
・『よしんば財布を忘れても、誰かにお金を借りるから困ることはない』
「なかんずく」と「よしんば」の違い
「なかんずく」と「よしんば」の違いを、分かりやすく解説します。
「なかんずく」は「数ある中でもとりわけ」という意味です。
「よしんば」は「仮にそうだとしても」という意味を持ち「もし~だとしても、~が起こることはないだろう」と仮定する文を構成するときに用いられます。
なじみのある言葉に言い換えると「なかんずく」は「特別に」で「よしんば」は「もしも」となります。
「特別に」と「もしも」を比べても意味は異なっており「なかんずく」「よしんば」はそれぞれ違う意味を持つ言葉であることがうかがえます。
まとめ
「なかんずく」と「よしんば」は、どちらもひらがな表記なので似ている印象もありますが、意味は全く異なります。
どちらも普段あまり目にすることのない言い回しですが、奥の深い日本語なのでぜひ覚えておくとよいでしょう。