「一張羅」
この一張羅という表現は、ここぞという時によく使われます。
しかし、それほどいい意味のある言葉ではないので、あまりすすんで使うものでもありません。
現在では本来と多少違った意味で使われることも多いですが、今ではその意味の方が一般に定着していると言えるでしょう。
「一張羅」の意味
一張羅は「いっちょうら」と読み、本来は「予備のない、これ一枚だけの衣装」という意味で使う言葉です。
しかし、前項にも書いたように、今ではその意味ではなく、「持っている中で一番いい衣装」という意味で使うことがほとんどです。
この言葉が誕生したのは江戸時代だと言われていますが、その頃は町民のほとんどがそれこそ「一張羅」で生活していたのに対し、現在ではそのようなことはありえない為、この解釈の変化は必然だと言えるかも知れません。
もちろん本来の意味も大切ですが、言葉は時代と共にその意味を変化させていくものだといういい例だと言えそうです。
「一張羅」の由来・語源
一張羅の由来は、着物の単位で「一張」(一枚)しかないもので、「羅」は羽織るという意味を持つ言葉からです。
しかし、この言葉のできた当時はこの表記ではなく、「一丁蝋燭」(いっちょうろうそく)と使われていました。
蝋燭もまた、一張(一本)という単位で数え、それしかない大切な蝋燭(当時は電気など通っていないので)という意味で、それを多少変化させ、同じように(ほとんどの町民が一枚しか持っていなかった)着物に対して使うようになりました。
そして、現在では「持っている中で一番の衣装」という意味に変化したという経緯です。
もちろん、本来の「一枚しかない」という意味で使うこともあります。
「一張羅」の言葉の使い方
「一張羅」は、現在では「持っている中で一番いいものを着てきた」という時に使うことが多いです。
男性の背広(スーツ)やそれに準じる正装を指して使うことが多く、女性は(に対しては)あまり使わない言葉かも知れません。
人がいい格好をしてきた時に、「それは一張羅だな」などと使うこともあり、意外と使い勝手のいい言葉だと言えるでしょう。
「一張羅」を使った例文・解釈
一張羅を使った例文です。
どれもよく見る形なので、この言葉の使い方がよく理解できると思います。
「一番いい」という意味ではない使い方もできるのが分かります。
「一張羅」の例文1
「うっかりコーヒーをこぼしてしまい、一張羅が台無しになってしまった」
いい格好をしてきたのに、うっかりしたことから台無しになったと言っています。
「一張羅」の使い方としてはごく一般的で、このような表現を耳にしたことがある人も多いでしょう。
「一張羅」の例文2
「明日のパーティーには一張羅を着て行くか」
これも使い方として多い例だと言っていいでしょう。
本当に一番いいものでなくても、「いつもよりいいものを着て行く(正装で行く)」という意味で使って構いません。
このようにも使えることから、意外と使い勝手のいい言葉なのです。
「一張羅」の例文3
「一張羅をクリーニング中なので、こんな格好で失礼」
この場合には、一番いいものという意味で使っています。
この使い方が現在では一番見られる形で、本当ではなくても、このように言っておけば多少ラフな格好でも許されるかも知れません。
「一張羅」の例文4
「そろそろ一張羅を新調するか」
上でこの言葉は男性の背広によく使う言葉だと書きましたが、その意味で使っており、持っている背広の中で一番いいものになる(予定の)それを新調しようと言っています。
本当に一番いいものになる訳ではなくも、新しい背広を新調する際にはよく使う表現です。
そのような使い方をしても問題のない言葉です。