「僻遠の地」は小説などでよく見かける言葉です。
しかし日常生活の会話ではほとんど耳にすることはありません。
簡単に表現すると「遠い所」という意味ですが、実際には特定の場所に対する心情的な意味合いを持っています。
この記事では、「僻遠の地」の意味を分かりやすく説明していきます。
「僻遠の地」とは?
「僻遠の地」とはある場所から遠く離れた地、もしくは中央から隔たれた地、という意味です。
場所だけでなく、文明や政治の中心から遠く離れた地、という意味でも使われます。
「僻遠の地」の概要
「僻遠の地」(へきえんのち)を分解してみます。
「僻」はひがとも読み、普通でない、変わっている、正当ではないという意味を持っています。
古典で「ひが事」「ひが者」と記載されますが、意味は普通でないこと、変わっている者となり、対象を貶めた言い方です。
動詞の「僻む」(ひがむ)は事実を曲げて考える、自分が不利なように貶めて考えることを意味します。
物事を素直に受け止めず、歪めて考えるという言葉なので、一段下からの目線で対象を見ているわけです。
つまり「僻」は普通以下の場所や状態を表す言葉と言えます。
「僻地」という言葉がありますが、こちらは離島や山間部など、交通や流通が不便な地、という意味で使い、「僻遠の地」とほぼ同じ言葉です。
「遠」は距離があること、「地」は場所ですから、「僻遠の地」とは遠く離れた普通以下の不便な土地、という意味です。
「僻遠の地」を使った文学作品
「僻遠の地」は小説や文学作品の中でよく使われます。
話し言葉で使うことはほとんどありません。
「僻地」よりも語呂がよく、少し強調した格調高い表現となることから、とりわけ歴史小説などで目にする機会があります。
小説、文学作品では以下の本に使われています。
・夏目漱石『坊ちゃん』
・海音寺潮五郎『天と地と』
・柴田錬三郎『嗚呼江戸城』
・胡桃沢耕史『旅券のない旅』
・辻邦生『北の岬』
・森鴎外『伊沢蘭軒』
「僻遠の地」の類語や言いかえ
「僻遠の地」を他の言葉の言い換えると以下のものが挙げられます。
・僻地
・遠く不便な地
・田舎の地
・辺鄙(へんぴ)な地
・鄙(ひな)の地
「僻遠の地」例文
「僻遠の地」を用いて例文を作ります。
・彼が今回の異動で赴任する先はまさしく「僻遠の地」だ。
・今、正に我々が目にする場所こそ、「僻遠の地」と言わねばなるまい。
・「僻遠の地」へと旅立ったあなたの境遇が哀れに思われてなりません。
・このような「僻遠の地」では十分な医療が受けられないでしょう。
・いかにそこが「僻遠の地」といえども、私の信念は決して揺らぎません。
・以前は人から「僻遠の地」などと謗られましたが、住めば都というものです。
・この「僻遠の地」を美しい楽園へと変えることが私の使命なのです。
まとめ
「僻遠の地」とは、遠く不便な地という意味であり、主に他所へ移る人を思い遣る場面で使われます。
特定の場所を貶めた表現ですが、簡単に「僻地」と書くよりも格調高い響きを持っています。
便利な土地から不便な土地へと移る人にはあらゆる苦難が予想されます。
「僻遠の地」と表現することで、旅立つ人の背中を押す一つのエールとなるのでしょう。