この記事では、「向上」と「上昇」の違いを分かりやすく説明していきます。
「向上」とは?
「向上」とは、これまでよりもよい方に向かうことです。
体力のことで考えてみます。
この人をAさんとします。
Aさんは、階段を上るとすぐに息切れする、握力が小学生なみ、5kg入りのお米を持つことができないといった状態でした。
このような状態を嘆いたAさんは、運動をして体力をつけることにしました。
その結果、階段を上っても息切れしにくくなり、握力は成人なみになり、5kgのお米を軽々持てるようになりました。
これは体力の面でよい方に向かったということができます。
これを「体力が向上した」といいます。
「5kgをお米を持てることは、大したことではない」と思う人もいることでしょう。
「向上」はこれまでと比べてよい方に向かうことで、世間一般の人と比べてという意味ではありません。
この例の場合だと、Aさんの以前の状態よりも今の状態の方がよくなっています。
そのため、「向上」したといえるのです。
「向上」の使い方
よい方に向かうという意味で使用をします。
握力の場合だと、20から40になるなど数値で表すことができ、この場合は数値が上がっています。
しかし、この言葉は数値が上がるという意味ではありません。
数値が上がることは好ましいと考えられているので、そういった事柄に使われることが多くありますが、好ましい方に向かうことで、数値が上がるという意味の言葉ではないのです。
「上昇」とは?
「上昇」とは、より高い位置、より高い程度に向かうことです。
熱気球のことで考えてみます。
熱気球は、袋を下方から温めて空気を送り込み、浮力を利用して高い位置に行き、飛行をする乗り物です。
袋に空気を送り込む前は、人が乗るバスケットが地面についた状態ですが、袋に空気を送り込むと熱気球が上に移動をしていきます。
これが「上昇」です。
より高い位置に向かっています。
「上昇」の使い方
さらに上の位置、さらに上の程度に向かうことという意味で使用をします。
気温や物価など数値で表せるものにも、考えのような数値で表せないものにも使用できます。
上に向かうことであり、よい方に向かうという意味はありません。
「向上」と「上昇」の違い
どちらの言葉にも「上」という漢字を使用しており、似たような意味を持っていそうですが、同じことを指しているのではありません。
「向上」はよい方に向かうことです。
必ずしも上の位置に行くことを指しているのではありません。
「上昇」は位置や程度が上に向かうことです。
好ましい方にという意味は含まれていません。
たとえば、気温が高くなることを「気温が上昇する」といいますが、気温が35度以上になることは、一般的には好ましくないとされています。
まとめ
2つの言葉は「上」という漢字を含み、意味が似ているように感じますが、一方はよい方に向かうこと、もう一方や高い方に向かうことで、意味していることは異なります。