この記事では、「吸着」と「付着」の違いを分かりやすく説明していきます。
「吸着」とは?
「吸着」とは、辞書には文字通り吸い付くこと。
この使用例としては、『石油が海に流出したので、吸着マットで除去を始めた』などが上げられます。
化学的用語としては、二つの異なる物質相が接するとき、その界面で、それぞれを構成している成分が濃縮される現象。
活性炭がその表面に着色溶液の色素をくっつけて脱色するなど。
正吸着ともいい、逆に界面で希薄になる場合を負吸着という、とあります。
「付着」とは?
「付着」とは、物が他の物にくっつくこと。
この事例としては、『絵の具が服に付着してしまった』のような使い方が上げられます。
また化学的には、異なる二つの物質が接触したときに、互いの分子間の力によってくっつくこと、と辞書に記載されています。
「吸着」と「付着」の違い
化学的には、「吸着」と「付着」は明らかに違いますが、この用語の定義を説明するのは省略し、それぞれ冒頭に記載している一般的な場面での使い方について、その違いを説明したいと思います。
一般的には、化学的な「吸着」現象を利用して人が意識的にものを吸いつけるケースに使われる事が多い言葉と言えます。
具体的には、先に記載した『吸着マット』や『活性炭による臭いの吸着』のように使われ、広い意味では音を「吸着」する『吸音』等もこのイメージの範疇と言えます。
一方で、「付着」の方は、どちらかと言うと意図しないで異物が付くケースに使われる事が多いと言えます。
先の例の様に、『絵の具が付着』や『異物が付着』の様に、付いて欲しくないのに付いてしまったや、付いている事を表現する場合に使われる事が多いと言えます。
また「吸着」は活性炭や吸着マットの様に、ポーラスな部分に異物を吸い込ませると言う原理面を限定した言葉ですが、「付着」はどのような原理で付いたかと言う限定はありません。
従って、化学的に厳密にいえば「吸着」によって付いた場合にも、「付着」と表現していると言えます。
まとめ
「吸着」と「付着」は化学的な用語としては、明らかに違う言葉です。
この化学的な意味も反映して一般的に使われている違いを考えると、「吸着」は化学的な「吸着現象」を利用して、人が意識的にものを吸い付けるケースに使われる事が多い言葉と言えます。
すなわち「吸着」はポーラスなものに液体や気体を吸い込ませると言ったニュアンスで、使われる事が多いと言えるのです。
それに対して、「付着」の方は、どちらかと言うと意図しないで異物が付くケースに使われる事が多いと言え、またどのような原理で付いたかと言う限定はありません。
従って、実際には化学的に厳密にいえば「吸着」によって付いた場合にも、「付着」と表現しているケースも少なくないと言えるのです。
この様に、一般的にも「吸着」と「付着」は使い分けられており、もちろん違う言葉と言えます。