エッセイという分野は現代でも人気があるジャンルです。
最近はブログやSNSで自分の生活や考えを発信する人も増えてきました。
エッセイは随筆ともいいます。
日本三大随筆と評価されている作品が何かを知っていますか。
それは「枕草子」、「徒然草」、「方丈記」です。
高校時代、古典の授業で習った人もいるでしょう。
しかし、名前は聞いたことがあるけれど、随筆の内容や違いを、正しく説明できるでしょうか。
特に「徒然草」と「方丈記」はともに鎌倉時代の成立で、男性が書いたものなので、混同している人もいるかもしれません。
この記事では、「徒然草」と「方丈記」の違いを分かりやすく説明していきます。
「徒然草」とは?
「つれづれぐさ」と読みます。
「つれずれ」ではなく「つ」が二回続く表記ですので注意してください。
上下2巻からなり、作者は吉田兼好(よしだけんこう)(兼好法師)とされています。
吉田兼好は名文家で、書き出しの「つれづれなるままに」が有名です。
出家前の1310年(延慶3)頃から31年(元弘1)にかけて断続的に書いたものと考えられています。
種々の思索的随想や見聞など243段よりなります。
「方丈記」とは?
「ほうじょうき」と読みます。
鎌倉初期の随筆で、作者は鴨長明(かものちょうめい)とされています。
1巻のみです。
1212年(建暦2)、仏教的無常観を基調にした世界観で、大風、飢饉などの実例を挙げて、人生の無常を述べています。
ついに隠遁して京都の郊外にある、日野山の方丈の庵に閑居するさまを記しています。
書き出しの「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」が有名で、簡潔・清新な和漢混淆(わかんこんこう)文の先駆的作品です。
著作のタイトルになっている「方丈」とは、どういう意味があるのでしょうか。
昔の言葉で1丈四方の面積をあらわしています。
1丈は約3mと考えられています。
方丈サイズの草庵は簡単に構築できたので、僧侶や隠遁者に愛用されました。
鴨長明の『方丈記』は、方丈の庵で書かれたことによる題名です。
「徒然草」と「方丈記」の違い
それでは「徒然草」と「方丈記」の違いを、改めて整理してみましょう。
いずれも、鎌倉時代に成立、作者は男性、仏教の影響を受けた「無常観」に基づく世界観という共通事項があります。
しかし、作品の雰囲気やテイストは異なります。
「徒然草」は「気まま」に自分の考えや見聞きしたことを書き連ねています。
文体も仮名文字が中心の和文と、和漢混淆文の両方からなっています。
一方、「方丈記」は、最初から最後まで和漢混淆文のみで書かれ、全体として重苦しい雰囲気がただよっています。
自らが経験した天変地異についての記述が多いのもその理由でしょう。
乱世をいかに生きるかという自伝的な要素が強いのも特徴です。
まとめ
この記事では「徒然草」と「方丈記」の違いをみてきました。
どちらも「鎌倉時代を代表する随筆」で、混同しやすいですが、「気ままに書いた作品」、「(どちらかというと暗い)人生観や無常観を書いた作品」というニュアンスの違いがあります。
一度じっくり読んでみることをお勧めします。