「惰性」と「慣性」、このふたつの言葉は、日常生活でも目にすることの多い言葉です。
字面はとても似ているふたつの言葉ですが、どちらも意味をはっきりと知っている方はあまり多くないと思います。
この記事では「惰性」と「慣性」の違いについて、わかりやすく説明していきたいと思います。
「惰性」の意味とは?
「惰性」とは、これまでしていた習慣や意識していないけれど続いてきた癖、いままでしていたことと同じ運動の状態をそのまま続けようとする性質をあらわしています。
読み方は「だせい」、「惰性で続ける」や「惰性的に」といった使い方をする言葉です。
「惰性」の「惰」にはもともと「だらけること」という意味があり、「怠惰」や「惰眠」などといった言葉にも使われている漢字です。
自分自身や相手など、人に使う場合は、「なんとなく続けていること」や「ずるずると続けていること」といった意味で使います。
一方で、物体などに使う場合は少し違った意味を持っており、「同じ運動状態を続けようとする性質」をあらわしています。
「慣性」の意味とは?
「慣性」とは、ある物体の運動状態において、なにか他からの作用を受けない限り現在の運動状態が変化しないという性質のことをいいます。
読み方は「かんせい」、物理での「慣性の法則」というのが代表的な使われ方です。
「慣性」は、物体の運動状態についての言葉であり、人間に対しては使うことがなく、ひとつの意味しか持っていない言葉です。
「惰性」と「慣性」の違いについて
「惰性」と「慣性」は、字面も似ており持っている意味が一部被っていますが、かなり大きい違いがある言葉です。
まずこのふたつの言葉はどちらも「物体の運動状態が、外からの力が加わらなければそのまま続いている」ということをあらわしています。
この部分では「惰性」と「慣性」は同じ言葉ですが、物理においてこれを法則としているときその呼び方は「惰性の法則」ではなく「慣性の法則」としか呼ばれません。
そしてもっとも大きく違っているのが「惰性」のもうひとつの意味についてです。
「慣性」はひとつしか意味を持っていないものの、「惰性」はもうひとつ意味を持っており、「今まで続いてきた習慣や癖が続くこと」という意味でこれは人間に対して使う言葉です。
だらけるようなあまり良くないニュアンスで「習慣や癖が続いてしまっている」ようなとき、「惰性」という言葉が使われます。
つまり、「惰性」は物体にも人間にも使うことがある言葉で、「慣性」は物体にのみ使う言葉であるというわけです。
「惰性」を使った例文
・『妻とは、僕が大学生だったころから付き合っていたが、だんだんと惰性で付き合っているだけの状態になってしまっていた。だが僕の就活を支えてくれたことや同棲を始めたことで改めて大切さに気づき、この春、交際3年目の記念日にプロポーズした。』
「慣性」を使った例文
・『物理のテストで0点を取ってきた息子を叱ってしまったが、問題に目を通すと「慣性の法則」やら「ニュートンの法則」やら、よくわからないものだらけだった。後で、ゆっくりとがんばるよう声をかけておこう。』
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「惰性」は人間にも物体にも使う言葉、「慣性」は物体にのみ使う言葉という違いがありました。
使う対象が異なっているので、間違いのないように覚えておきましょう。