その場の空気をあらわす表現は、日本には色々あります。
この記事では、「愁嘆場」と「修羅場」の違いを分かりやすく説明していきます。
似たような語句の中身をしって、日本語力に磨きをかけていきましょう。
「愁嘆場」とは?
愁嘆場(しゅうたんば)とは、切なくもの悲しい場面のこと。
お芝居やドラマでは悲しみにくれているようなシーンを指します。
また実生活に置きかえて、涙が止まらないような場面をこう表現することもあります。
もともとこの言葉は、歌舞伎から生まれたフレーズです。
病の床についた母が亡くなったり、飢饉がつづいて食べる物がなかったり…。
主人公が突然の不幸をなげき悲しむ様子を「愁嘆場」といいました。
時代の移り変わりとともに、歌舞伎で用いられた表現が日常生活にも根付いていったようです。
場を取り外した「愁嘆」は、亡くなったときのお悔やみ文でも見かける言葉です。
そのため「愁嘆場」も身近な人やお世話になった人が亡くなったり病気になったり、不運に見舞われたときに使用します。
哀しいシーンに、活用される言葉です。
「修羅場」とは?
修羅場(しゅらば)とは血が流れるような、激しい場面のこと。
争っているシーンをさす言葉です。
日常生活では浮気がばれてしまった時、男女の仲がもつれてしまった時などに用います。
もともと修羅場という言葉は、仏教の言葉。
阿修羅という神さまと帝釈天という神さまが、激しいバトルを繰り返していた所を修羅場と呼んでいました。
この修羅場という場は、生きている時に悪いことをした人が向かう場所と定められています。
つまり「生き地獄」と思える環境です。
生きた心地がしないことから、しだいにドロドロとした現場を修羅場と呼ぶようになりました。
浄瑠璃の世界でも、激しいあつれきが見られるシーンを修羅場といっています。
「愁嘆場」と「修羅場」の違い
どちらも「場」という単語が使われているので、非常にまぎらわしいです。
「愁嘆場」と「修羅場」の違いを、分かりやすく解説します。
・悲しみと怒り 「愁嘆場」と「修羅場」は、古くから日本にある言葉です。
「愁嘆場」は歌舞伎の主人公が悲しみに暮れていたことから名付けられた言葉なので、悲しみのどん底にいる時につかわれます。
一方で「修羅場」は仏教で地獄をあらわす言葉。
神さま同士が戦っていた様子から名付けられた言葉なので、針のむしろ状態をさします。
いざこざが生まれて、収まりがつかない時に用いる言葉です。
悲しみが強い場面では愁嘆場を。
言い争っている場面では修羅場を。
うまく使い分けをしていきましょう。
まとめ
「愁嘆場」と「修羅場」の違いを分かりやすくお伝えしました。
愁嘆場は死別や離別を経験して、涙がとまらない感情のとき。
修羅場は男女の仲がもつれて、生きた心地がしない心情のときに使います。
どちらも「場」が付いているので誤解を招きやすいのですが、背景を知っておくと間違いにくくなります。