「泥縄」とは?意味や使い方を解説

意味と使い方

「泥縄」とは

「どろなわ」と読み、「泥棒を捕らえて縄を綯(な)う」を略した言葉です。

このように何かの行為を表す文章やことわざを略して名詞のようにした例は他にもあり、「やぶへび(藪を突いて蛇を出す)」「たなぼた(棚からぼたもち)」「壁ドン(壁をドンと叩いて音を出す)」のように、簡略化によって会話を円滑にする働きがあります。

「泥縄」の意味

上記で述べた元になる文章を見ると分かる通り、「泥でできた縄」でも「泥棒が縄に縛られている状態」でもありません。

縄というのは、たくさんの繊維質を束ねて綯う事で、時間をかけて用意するものです。

つまり、泥棒を捕まえてから、縛るための縄を用意していたのではあまりに要領が悪く、準備が遅いというわけです。

ここから転じて、「前もって準備をせず、何かを始めてから、また事が起こってからようやく取り掛かる」事をこう言うようになりました。

「泥縄」の言葉の使い方

対応が後手後手になってしまった場合、あるいはただのんびりした気質で、作業の納期を甘くみていた場合など、誰しもかなり思い当たる節があるのではないでしょうか。

そうした時、会話の中で「それは泥縄だね」などと用いると、わざわざ長い元の文を引用する事なく「どろなわ」というわずか四文字だけで「今頃あわてて始めているのかい」という意味を含ませられます。

このように「泥縄」には、「もっと早く着手すれば良かったのに、遅いよ」という非難や嘲笑の意味が強く込められています。

また、他の例としてあげた「やぶへび」「たなぼた」に比べるとやや一般知識としては浸透度が低い言葉とも考えられますので、はっきりと略語として明示したい場合は「それは『泥縄』だね」などと強調するのも一つの手です。

また泥縄のように、その場しのぎのやっつけ仕事を意味する言葉には「一夜漬け」「付け焼き刃」「駆け込み」「生まれた後の早め薬」など、非常に数多くの例があります。

「泥縄」を使った例文・解釈

様々な場面で応用の利く言葉ですので、以下の四例でその用法を学んでいきましょう。

「泥縄」の例文1

「オリンピックに向けてのインフラ整備は今や泥縄状態になっている」

実際の2020年東京五輪がどのような状況かはさておき、大規模プロジェクトにはこうした不安が必ずついて回ります。

リーダーとなる人物がいない、非協力的な都民が多い、そもそも予算を大きく読み違えた…などの要因で、なかなか現場にGOサインが出ない事もありえます。

問題を解決できないまま次の問題が噴出し、それが続く事で後手に回らざるを得ない状況はなるべく避けたいところです。

「泥縄」の例文2

「泥縄式の一夜漬けで臨んだが、正直自信はない」

主にテストを控えた学生によくある状況です。

まだあと何日ある、と嫌な事を先送りにした結果、気がつけばテスト前日の夜になってしまった。

あるいはなぜか部屋の片付けを始めてしまい、慌てて勉強を始めた。

こうした苦し紛れの策は、たとえ切り抜けられたとしても結局は丸暗記などの後の身に付かないものであり、本当の学習ではないために自分が損をする事になります。

「泥縄」の例文3

「警察の対応はあまりに泥縄的だった」

10月末のハロウィンなど繁華街で暴徒が出ると分かりきっているような場合に、最初から監視体制を敷かずにトラブルが起きてから出動するなどの出遅れは、間違いなくけが人や事故の増加につながります。

しかし東京の各所において、近年ではきちんとした対応がなされているようです。

「泥縄」の例文4

「泥縄なやり方も、たまにならいいものだ」

このように一般的には悪として扱われる泥縄式も、あくせくしすぎる現代人には逆の戒めとして語られる場合もあります。

つまり、例えば休日の過ごし方などをあえて無計画に行うことで、緊張をほぐし疲れを癒してはどうか、という考え方です。

この考えは禅や仏の道にもあるようで、寺社での説教会などに参加すると、前もって準備をしない=その場その場で必要な事を必要なだけすればいいではないか、といった話を聞ける事もあるようです。

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