この記事では、「蒸発」と「蒸散」の違いを分かりやすく説明していきます。
「蒸発」とは?
「蒸発」(じょうはつ)とは、液体が気体に変化することです。
物質は、一定の条件で固体から液体、液体から気体、または固体から気体へと変化し、その形状を変える性質があります。
これは「相転移現象」と呼ばれます。
「蒸発」が起こると液体の表面が気体へ変化し、気体になった物質が大気中に拡散しますが、一定の条件でまた液体や固定に戻すことができます。
水の「蒸発」を例に挙げると仕組みが分かりやすいでしょう。
水は、まわりの温度が高くなると蒸発が起こります。
洗濯物を干すと、布に含まれる水分が気化して水蒸気になり、その水蒸気が大気中に拡散されて洗濯物が乾燥するのです。
ちなみに、水蒸気は集められて冷却されると再び液体(水)に戻ります。
窓ガラスにつく結露もその一例です。
また、人が急に失踪することも「蒸発」と表現されます。
急に消えて姿が見えなくなる様子は、たしかに水が蒸発して消えてしまうかのようです。
「蒸散」とは?
「蒸散」は、植物に含まれる水分が大気中に放出される現象です。
植物の葉には「気孔」と呼ばれる穴があり、そこから酸素と二酸化炭素、水分の出し入れをおこなっています。
地上部にある気孔または茎や花から水蒸気を放出することで、植物中に含まれる水分や熱を調節しているのです。
そして、この「蒸散」によって水分の少なくなった根が土壌から水を吸い上げ、その繰り返しで植物の生長が促進されていきます。
気孔は光合成がおこなわれる時に開くため、日光量の多い日中には蒸散が盛んにおこなわれます。
しかし植物に含まれる水分量が低下した時は、水分の損失を防ぐために気孔を閉じるので蒸散は起こりません。
「蒸散」は、植物が生命を維持し生長するために欠かせない現象なのです。
「蒸発」と「蒸散」の違い
「蒸発」と「蒸散」の違いを、分かりやすく解説します。
「蒸発」は、物質が個体や液体から気体に変化する現象を指します。
「蒸散」は、植物から水蒸気が放出される現象です。
「蒸発」は水のほか、アルコールやアンモニアなどの液体、金属といったさまざまな物質で起こります。
一方「蒸散」は植物だけにしか起こりません。
このように「蒸発」と「蒸散」は根本的に定義が異なっています。
ただし、植物が「蒸散」によって気孔から水蒸気を出す時、植物に含まれる水は「蒸発」して水蒸気になっています。
まとめ
「蒸発」と「蒸散」はよく似た印象もありますが、それぞれの持つ意味は異なります。
「蒸散」は理科で習ったけど忘れたという人も多いでしょう。
植物だけに起こる現象が「蒸散」、それさえ覚えておけば判別しやすくなるはずです。