電子マネーや、キャッシュレスでの決済、ポイント還元など、買い物の仕組みが複雑化するのと同時に増えたのが規約の確認作業と同意です。
スマートフォンなどで注意事項を下までスクロールしたり、同意欄にチェックを入れたりするときに、慣れない法律用語を目にすることが増えました。
「譲渡」という言葉はその一つです。
ポイントは「譲渡」できません、などと書いてあるのを見た人もいるかもしれません。
無償で渡すことをいいますが、似た言葉に「贈与」があります。
この記事では、「譲渡」と「贈与」の違いを分かりやすく説明していきます。
「譲渡」とは?
権利や財産、法律上の地位などを他人に譲り渡すことをいいます。
主に法律分野での専門用語として使用され、譲渡裏書、譲渡所得、譲渡担保などの言葉があります。
「譲渡」の使い方
「譲渡」が使用される代表的な例文をみてみましょう。
・借金の返済ができなかったので、建物を債権者に「譲渡」することになった。
・「譲渡」担保とは、担保となる物の所有権を形式的に債権者に「譲渡」するという方法により行われる担保のことで、民法に規定はないが,判例では有効とされる。
・ゴルフクラブの会員の権利は、「譲渡」ができないと規約に書いてある。
・買い物をしてクーポンをもらったが、他人への「譲渡」は無効だと注意書きがあった。
「贈与」とは?
他人に物品を贈り与えることを意味します。
法律の分野では、当事者の一方が無償で自分の財産を他人に与える意思を示し,相手がこれを受諾することによって成立する契約をさします。
似た言葉に、授与、付与、分与、下賜、支給、給付、交付などがあります。
「贈与」の使い方
「贈与」が使用される代表的な例文をみてみましょう。
・私の祖父は資産の一部を孫である私に生前「贈与」することに決めた。
・犯人は男から金品などの「贈与」を受けており、それが犯行を明らかにする手掛かりとなった。
・「贈与」税とは、「贈与」により財産を取得した個人に課せられる国税のことである。
・ある議員が土壇場で意見を変えたので、賄賂の「贈与」があったのではと疑っている人がいる。
「譲渡」と「贈与」の違い
「譲渡」は譲り渡すことをいいますが、対象になるものは、金品だけでなく権利も含まれます。
しかし「贈与」は物やお金、土地など物理的なものに限ります。
使い分けるときは、他人に渡すものが何であるかをまず考えましょう。
金品は「譲渡」でも「贈与」でも間違いではありませんが、「譲渡」がただ無償で渡すという行為を表しているのに比べて、「贈与」は贈って与えるという、何かしらの「意思」を含んでいるというニュアンスの違いがあります。
贈ることによって、相手を称えたり、相手に親しみを表現したり、などです。
相手に物を渡す動機や理由を考えてみましょう。
まとめ
「譲渡」と「贈与」はとても似た言葉ですし、あまり日常的には使わないかもしれません。
しかし新しく加入したグループの規約や、同意書などに何気なく書いてあり、実は身近な言葉といえます。
ニュースなどでもときどき耳にするので、違いを正しく理解して、その物や権利が渡された背景や関係を知る参考にしてください。