「パクる」とは
「パクる」は「フケる」「イモる」「サボる」「ファビョる」…と無数にある、何かの言葉に「〜る」を付け足す事で強引に動詞化してしまう俗語の一種です。
昭和末期(1980年前後)には少なくとも小学生の間にまで浸透していましたが、起源は意外に古く、明治時代にまでさかのぼるといいます。
「パクる」の意味
同じようでいて微妙に異なる二つの意味を持ちますが、前後の文脈や対象から容易に判断する事ができます。
まずは「捕まえる」という意味で、これは動物などを捕獲する場合ではなく、警察などの機関に逮捕されるのとほぼ同義として使われます。
もう一つは、「他者のアイデアや所持品を黙って持っていく、盗む」という意味です。
これらは誰からともなく発生し、主に後者の意味で現在でも廃れずに使われています。
ちなみにこの言葉がどのように成立したのかは俗語だけあって諸説ありますが、前述した「サボる(=フランス語のサボタージュから)」など、多数の俗語の由来から見ても、パッケン(=ドイツ語で捕捉する)から生まれたと考えるのが最も可能性が高いようです。
「パクる」の言葉の使い方
音の響きといいその不穏な意味といい、俗語の中でも非常に幼稚かつ失礼なものといえます。
よって、公の場や報道、ビジネスシーンで軽々しく使ってよい言葉ではありません。
また、例えば警察官や盗人が、わざわざ「今から君(の物)をパクるよ」とはあまり言いませんので、「パクられる」「パクられた」と受身形で語られる場合がほとんどです。
「パクる」をさらに派生させた言葉も多くあり、一例をあげると「借りっぱなしで返すのを忘れてしまった、またはほとぼりが冷めるまで知らんぷりをする」事を「借りパク」と呼びます。
「パクる」対象が物質だけでなくアイデアなどにも及ぶというのは先に述べた通りですが、アイデアを盗む事との境界が曖昧で、時に誤解の元となる行為も存在します。
「オマージュ(元のものに敬意や愛を込めて、意図的に似せる、または連想させる)」「インスピレーション(何かに刺激を受け発想する)」「パロディ(風刺目的や遊び心で元に手を加える)」などで、これらはきちんと原典や出典を明示する事で、「パクり」ではないと理解してもらう必要があります。
一方「トレース(模写したとしか思えない構図、形状)」などが特に絵画やマンガなどで批判される事もあります。
「パクる」を使った例文・解釈
それぞれの時代の若者を中心に、アンフォーマルな場でよく用いられている言葉です。
以下にいくつかの例文を紹介します。
「パクる」の例文1
「おまわりにパクられた」
昭和の不良少年ドラマによく出てきそうなセリフです。
「おまわり」とは当然警察官の事であり、仮に窃盗で補導されたとすると、(物を)パクったら(自分が)パクられた、という文章にするとよくわからない状況になっています。
「パクる」の例文2
「これはパクりではなく、オマージュである」
その辺の小学生でも知っているほど一般的になりすぎた言葉ゆえ、ちょっとした事でも「パクりだ」と騒ぎ立てる人が一定数いるのは事実です。
しかし、これだけ人類の文化が発展し、また創作物の保存も容易になった今日、全く誰も生み出した事のないオリジナルというのは困難ですから、そのものがパクりかどうかの判断は慎重さが求められるといえましょう。
「パクる」の例文3
「パクツイを繰り返していた男が逃げた」
派生語の一例です。
「パクツイ」とは、SNSサービスtwitterにおいて、主に他者の書き込み(ツイート)を自分のものであるかのようにコピーし投稿する事をいいます。
動機のほとんどが承認欲求であり、味を占めてしまって抜け出せない人も中にはいるようです。
当然事が明るみに出れば一転して批判の対象になりますから、文中の人物はそれを受けてtwitterアカウントを削除、逃亡したという状況のようです。