「相殺」と「差し引き」はどちらも金銭に関して使われることが多い言葉ですが、違いはあるのでしょうか。
この記事では、「相殺」と「差し引き」の違いを分かりやすく説明していきます。
「相殺」とは?
「相殺」とは、差し引いて、互いに損得がないようにすること、帳消しにすることです。
長所・利点などが差し引かれてなくなることという意味もあります。
また、二人が互いに相手に対して同種の債権を有する場合、双方の債権を対等額だけ差し引いて消滅させることを指す場合もあります。
この意味での相殺の具体例は、次の通りです。
AさんがBさんに10万円の絵画を売り、代金を請求する場合に、もしBさんがAさんに以前15万円を貸していたならば、Bさんは相殺により、代金の支払いを免れることができるかもしれません。
「相殺」と似た言葉に「帳消し」がありますが、これはある物事によってそれまでの損得などの価値が失われることです。
「相殺」は、英語で“offset”といいます。
「相殺」の使い方
「相殺する」というように動詞の形で使うことができます。
「相殺権」は、破産法上、破産者に対して債務を負担している破産債権者が破産債務とその債務を破産手続きによらずに相殺する権利のことです。
「差し引き」とは?
「差し引き」とは、差し引くこと、特に金銭の収支・貸借などの計算をすることです。
また、潮の満ち引きや体温の上がり下がりという意味もあります。
「差し引き」は英語で“deduction”といいます。
「差し引き」の使い方
動詞として使う場合には「差し引きする」という形になります。
「差引勘定」は、損得を計算すること、利害・得失などを考え併せて判断することです。
また、潮の満ち引きのことを「潮の差し引き」ということがあります。
「相殺」と「差し引き」の違い
「相殺」は、差し引いた結果がプラスでもマイナスでもなく、ゼロになることを指しますが、「差し引き」は、差し引いた結果がゼロになるとは限りません。
「差し引き」の結果、プラスになったりマイナスになったりする場合もあります。
ただし、二人が互いに相手に対して同種の債権を有する場合に双方の債権を対等額だけ差し引いて消滅させるという意味で「相殺」を使う場合は、必ずしもゼロになるわけではないので注意が必要です。
「相殺」の例文
・『こないだ君にお金を貸したのからそれと相殺にしてくれ。』
・『相殺権を行使する。』
・『辛さと甘さが相殺しあっている。』
・『良いことをしたが、その前に大失敗もしているので相殺だな。』
「差し引き」の例文
・『差し引き10万円の赤字を出してしまった。』
・『以前貸した分を差し引きする。』
・『差引勘定すれば安い買い物だ。』
・『このあたりの海は潮の差し引きが激しい。』
まとめ
「差し引き」は、差し引くこと、「相殺」は、差し引いてゼロになることです。
「差し引き」は、ゼロになることもあれば、プラスやマイナスになることもあります。
ただし、「相殺」は、別の意味で使われる場合もあるので注意するようにしましょう。