「おべんちゃら」とは
おべんちゃらとは、古くは祇園で使われていた京言葉です。
明治時代に入り、丁寧を表す接頭辞「お」が付くようになりますが、それまでは単に「べんちゃら」と言っていたようです。
「おべんちゃら」の意味
この言葉を分解すると、「お」「べん」「ちゃら」の三語になります。
「お」は先に述べた通り丁寧語、「べん」は弁論、つまり自分の意見のことです。
「ちゃら」だけやや不明瞭で説明が難しいですが、これはいい加減という意味があり、他には「ちゃらんぽらん」なども語源は同じです。
つまり三つを組み合わせて、「口から出任せを言う」事をおべんちゃらといいます。
「おべんちゃら」の言葉の使い方
このようにおべんちゃらは心にもない言葉を言う事で、とりわけ「相手を必要以上に持ち上げて、おだてる」場合に使われます。
後述の通り類語は多数ありますが、いずれも本当のコミュニケーションとしては失礼に当たりますし、またそれを聞いている周囲もいい気分がしません。
あまり使いたくない、聞きたくない言葉と言えますが、その一方でビジネスシーンではついつい「おべんちゃら」を駆使したくなってしまう場面も、経験した方は多いのではないでしょうか。
また、京都人なら日常的に用いる頻度も多いはずで、その場合は特に深い意味もなく「そんなに褒めても、何も出ませんよ」と謙遜するのに丁度しっくりくる言葉です。
「おべんちゃら」を使った例文・解釈
標準語の一般会話にはあまり出てきませんが、意味を同じくする類語も多くありますから、ここでしっかりと学んでおきましょう。
「おべんちゃら」の例文1
「あんたはん、おべんちゃら言わんといておくれやす」
京都生まれの方が自信を失くしかけていた時に、東京の知人に「実は昔から君の事を買っていたんだ」と言われ、心が救われる…そんな場面での一言です。
もちろん言った方も言われた方も「おべんちゃら」もしくは「買いかぶり」を強く意識しているわけではなく、本心とは分かっていながらも即座に受け止めることができない、しかしその一言でも、自分が努力して来た事のいくらかが報われた、そんな気持ちが込められています。
「おべんちゃら」の例文2
「あいつはいつも先生におべんちゃらばかりで、取り入ろうとしている」
特にキザな人物や腰ぎんちゃくの立場にいる人物が、登場するたび常に誰かをおだて、甘い汁を吸ったりその陰に隠れるといった不道徳な行為をします。
一昔前のマンガなどでは、特に京都が題材でなくともよく見かける言葉でした。
時代によって若者の語彙も変わりますので、またいつか広まる事もあるかもしれません。
「おべんちゃら」の例文3
「おべんちゃらだけで出世したような奴」
実際にどのくらいの割合なのか定かではありませんが、接待能力や口先のうまさでのし上がったビジネスマンもいるようです。
「おべんちゃら」には「褒めてモチベーションを上げる」などの前向きな意味はありませんので、あまり周囲にいてほしくない人物の好例といえます。
「おべんちゃら」の類語と解釈
京言葉以外では、以下のように様々な類語が見られます。
お世辞
「お世辞(おせじ)」は機嫌を取るためだけの言葉の事で、「世辞」の「世」は世渡り、つまり言葉たくみに世間を生きていく事から来ています。
「お追従(おついしょう)」ともいい、一般的には最もよく使われる言葉といえるでしょう。
おべっか
口のうまい事を表す「弁口(べんこう)」が訛って「べっか」になったと言われています。
このおべっかやおべんちゃらの方が、語感として軽口のようにも聞こえる場合があるので、対象に合わせて使い分けるのもいいでしょう。
ごますり、ごまをする
おべんちゃらの類語の中でも、完全に相手に自分を売り込み、取り入るためのものが「ごますり」です。
遅くとも江戸時代には見られた言葉で、すりゴマが細かく散らばる様子から、さりげなく相手に自分を印象付ける事をこう呼ぶようになったといいます。
阿諛
大変難しい言葉ですが「あゆ」と読みます。
「諛」の字に媚びへつらうという意味があるので、これ一語でも「おべんちゃら」同様に(お堅い印象はありますが)使えますし、前述の追従などと連ねて「阿諛追従(あゆついしょう)」と四字熟語にする場合もあります。