「大麦」と「麦芽」は食品の原材料として表記されていることがしばしばあります。
いずれも「大麦」の種子を指すのですが、一体、どこで違いが生じるのでしょうか。
この記事では、「大麦」と「麦芽」の違いを分かりやすく説明していきます。
「大麦」とは?
「大麦」は人類がもっとも古くから栽培していたとされる、イネ科の穀物の一種です。
小麦の育成が難しい地方でも育つので、代わりに大麦を栽培しているケースが珍しくありません。
グルテンが少ないため、パンや麺としては余り使われていないのが特徴です。
用途としては押し麦にしたり、麦飯にしたりして食されています。
日本では山芋などをすりおろして食べる、とろろと相性が良いことで有名です。
「麦芽」とは?
「麦芽」は発芽した麦の種子を意味します。
芽の部分だけを使うのではなく、あくまでも発芽した種子を材料に使うのが一般的です。
通常は「大麦」の種子を発芽させたものを指しますが、小麦やライ麦も利用されます。
「麦芽」そのものを食すよりも、加工食品や飲料に加工されることが多いです。
有名なものでは水飴が麦芽の糖分を利用します。
他にウイスキーやビール、酢などの発酵技術を用いる飲料・調味料にも欠かせません。
医薬業界としてはアミラーゼの原料としても知られています。
作り方は簡単で、二条大麦などの原料を水に浸してから湿度などを調整した環境においておけば、もやしのように発芽するのが特徴です。
このように容易に入手できるため、今から数千年前の古代バビロニアでは既に、利用されていたと言われます。
「大麦」と「麦芽」の違い
「大麦」と「麦芽」の違いを、分かりやすく解説します。
まず、「大麦」は種子自体を意味しており、「麦芽」はこれを発芽させたものです。
つまり、種子から芽が出ているか否かが最大の違いとなります。
それではなぜ、わざわざ発芽させるのかですが、実は、これによって種子の中の成分が変化するのです。
「大麦」の中には糖化酵素が大量に含まれているのですが、活性化されていません。
よって、発芽させることで酵素を活性化させ、「大麦」のデンプンを糖に変えるわけです。
糖はご存じの通り、色々な使い道があります。
発酵させてアルコールを作ったり、酢にしたりは代表的な使い方でしょう。
甘みが強くなるので、モルトシロップなどの甘味料として利用されます。
特に「大麦」は発芽させたときの糖化酵素の働きが優秀なのが特徴です。
このため原材料が「麦芽」となっているとほとんどは「大麦」を指しますが、小麦やライ麦を発芽させている場合も「麦芽」と呼べる点には、注意が必要でしょう。
まとめ
「大麦」と「麦芽」の違いを紹介してきました。
「大麦」は種子のことで、それを発芽させたのが「麦芽」です。
なお、ビールなどでは発生した芽や根は取り除いて使うのが一般的。
酵素によって種子の中のデンプンを糖化させるのが目的なので、芽や根自体には余り意味がないのです。