刑事裁判の結果を伝えるニュースでは「実刑」と「有罪」が明確に使い分けられています。
どちらも同じ意味のように思えますがいったいどのような基準で区別されているのでしょうか。
今回は、「実刑」と「有罪」の違いについて解説します。
「実刑」とは?
「実刑」とは、「確定後にすみやかに刑が執行される判決」を指す言葉です。
刑事事件の判決にはいろいろな種類があります。
どのような判決が出るかによって被告の取り扱いは変わりますが「判決が確定すると猶予が与えられることなくすぐに刑が執行される判決」が「実刑」です。
「実刑」とは「実際に刑罰が下される」の略で「実刑判決」とも呼ばれます。
「実刑」は正式な法律用語ではなく慣習的に使われている表現に過ぎませんがすでに定着している一般的な言葉であり、裁判所や裁判官の各判決文でも使われています。
本来の言葉の意味からすると罰金刑も「実刑」に含まれるのですが、慣習として「実刑」と表現されるのは身体的な自由の制限を伴う「禁錮刑」と「懲役刑」のみで罰金刑や死刑には用いられません。
「実刑」の使い方
・裁判で被告に実刑の判決が言い渡された。
・実刑を回避するために弁護士が奮闘する。
・なんとしても実刑だけは避けたいので情状酌量狙いで証人を用意する。
・あれだけのことをしでかしておいて実刑にならないのは納得がいかない。
「有罪」とは?
「有罪」とは、「犯罪の事実が認定され成立すること」という意味の言葉です。
刑事事件の裁判は「犯罪が事実であるかどうか」が一番の争点です。
犯罪が事実でなく成立しない場合は「無罪」となり処分がくだされることなく放免されます。
犯罪が事実であると認定され罪を償うための懲罰が必要であるとする判決が「有罪」です。
「有罪」の判決がでると被告の罪が確定します。
判決にしたがって刑が執行されますが、場合によっては刑の執行まで一定の猶予を設ける「執行猶予」が適用されます。
執行猶予であっても犯罪事態は成立しているので「有罪」として扱われます。
「有罪」の使い方
・裁判で被告が有罪になった。
・これだけ証拠がそろえば有罪は揺るがない。
・確たる証拠もなしに有罪になるはずがない。
・日本では刑事裁判の99パーセントは有罪である。
「実刑」と「有罪」の違い
「実刑」と「有罪」の違いは「執行猶予」です。
日本の裁判には執行猶予という制度があります。
執行猶予とは「犯罪の事実が裁判で成立した被告のうち情状酌量の余地のある者に対して一定の期間だけ刑の執行を猶予し、その期間に再犯や事故などがなければ刑を執行しない」という制度です。
執行猶予の判決が出れば無罪と同様にすぐに社会復帰できるので、執行猶予がつくかどうかは判決の大きな分かれ目です。
執行猶予の判決が出た被告は「有罪」ではありますが実際に刑は執行されていないので「実刑」ではありません。
執行猶予の判決を含むのが「有罪」で含まないのが「実刑」という基準でふたつの言葉が使い分けられています。
まとめ
「実刑」と「有罪」の違いは裁判を伝える報道では厳密に区別されています。
同じ裁判結果でも言葉の違いで全く意味合いが変わってきます。
正確な情報を知るためにもそれぞれの意味を正確に理解してください。