作品を悪く言う表現として「愚作」と「失敗作」があります。
どちらも使われたくない言葉という共通点はありますがこの2つは意味が異なる全く別の表現です。
詳しことを人に尋ねるのも気が引ける単語ですが具体的にはどんな意味を持つのでしょうか。
今回は、「愚作」と「失敗作」の違いについて解説します。
「愚作」とは?
「愚作」とは「完成度が低くつたない作品」というのが本来の意味です。
「愚作」には「つまらないもの、価値が低いもの」というネガティブな意味があります。
他者の作品に対してけなす意味で用いられる言葉ですが、転じて自分の作品に対して謙遜の意味で使われる用例も見られます。
この場合の「愚作」は「私の作った作品」という意味であり謙遜のみを込めて大したことのない作品を意味する「愚作」が用いられます。
この時の「愚作」は贈り物をするときに見られる表現の「つまらないもの」と同じようなニュアンスで自分下に置くことで相手を高める敬意表現として使われます。
「愚作」の使い方
・前評判の高い作品だったが実際に見た感想としては愚作と言わざるをえない。
・あんな愚作を持ち上げるなんて映画評論家としてどうかと思う。
・愚作ではありますが精魂込めて完成させましたので鑑賞していただければ幸いです。
・自分の作品を愚作と呼ぶのは関わってくれた人たちに対して失礼ではないのだろうか。
「失敗作」とは?
「失敗作」とは「当初予定していた品質に及ばないまま完成してしまった作品」です。
「失敗作」には「事前に理想としていた形がありながらそうならなかった」というニュアンスが含まれます。
作品の判定基準として成功と失敗があり成功に至らなかった作品が「失敗作」です。
作品としての完成度や評価以外にも興行成績や売上など数字としての目標を達成できなかったときにも「失敗作」という表現が使われます。
ある作品を「失敗作」と見るかどうかは視点によって判断が変わります。
作品としては素晴らしいが商業的には失敗、というケースもあれば売上は素晴らしいが特段観るべきところのない平凡な作品が「失敗作」扱いされることもあります。
誰にとっての失敗なのか、その判断次第ではある作品が「失敗作」であると同時に傑作と評価されるような状況も存在します。
「失敗作」の使い方
・見た人の評判は良くても興行収入が赤字では失敗作と言わざるをえない。
・予算不足とスケジュールの遅れにより出来上がった完成品は完全な失敗作になってしまった。
・失敗作の多くは準備不足が原因である。
・高い先進性は評価に値するものであり失敗作の烙印を押すべきではない。
「愚作」と「失敗作」の違い
「愚作」が出来栄えや完成度など作品の評価そのものを指す言葉であるのに対し「失敗作」は売上や当初の目標など想定していた基準に達していない作品に対して使われる言葉です。
どちらも出来の悪い作品という意味は共通して見られますが「愚作」はつたなさや未熟さを強調する場合にふさわしく「失敗作」はある視点から見たときに成功していないときに用いられる表現です。
まとめ
「愚作」と「失敗作」は意味的に共通している部分はありますが本質的には別物です。
それぞれの特徴とニュアンスを適格に汲みとって正しく使い分けてください。