昔から使われている表現のひとつに「掛け値なし」という言い回しがあります。
魅力やすばらしさを伝えるときなどによく使われる表現ですがどのような意味の言葉なのでしょうか。
今回は、「掛け値なし」の意味と言い換え可能な類語について紹介します。
「掛け値なし」とは?意味
「掛け値なし」とは「大げさにでなく正当な評価であること」という意味の言葉です。
「掛け値なし」の概要
「掛け値なし」の由来は江戸時代の呉服商三井越後屋の商法に由来しています。
当時の商売では値札にはやや高めの価格を表示し客との交渉でそこから割り引いた価格で販売するのが主流でした。
このように値札が示す定価から何割か掛けて値下げして売ることを「掛け値売り」といいます。
七掛けなら定価の七割、八掛けなら定価の八割というようにあらかじめ割引することを織り込んである程度高めの定価を表示しておくのが当たり前であり、客もそのことをふまえた上で価格交渉して値引かせてから購入するというのが当時の一般的な取引でした。
三井越後屋は当時主流だった掛け値を前提にした商売を捨てて正統な取引価格の表示を始めました。
さらに当時一般的だった後払いやツケ払いもやめ、その場での現金取引のみに限る代わりに格安で反物を販売しました。
このような三井越後屋の商法は「現金掛け値なし」と呼ばれ大評判になります。
その後このような商法は全国に広まり現在ではごく当たり前になっています。
「掛け値なし」は「現金掛け値なし」から転じた表現です。
「割引を織り込んだ高い値札をつけず正統な価格を表示する」ところから「過大評価や誇大表現ではなく正統に評価すること」という意味で使われています。
「実力や実績などをありのままに評価すること」を意味する言葉で、一般的には「偏りのない正統な評価」を表しています。
「掛け値なし」の言葉の使い方や使われ方
・彼の実力派掛け値なしに世界レベルに達している。
・このレストランは掛け値なしに美味しい。
・人柄はともかく、演奏技術だけは掛け値なしに一流である。
・話題性だけだと思われがちだが、この作家の作品は掛け値なしに面白い。
「掛け値なし」の類語や言いかえ
・普通に
「過大評価することなく普通の立場からから見ていること」を意味する言葉です。
現代的な言葉遣いでありスラングの一種とみなされることもありますが若い世代では広く普及している表現です。
特別に事情を組んだり下駄を履かせたりすることなしに評価する、という点が「掛け値なし」と類似しています。
・客観的に見る
「偏った他立場に経つことなく第三者の視点から評価すること」という意味の言葉です。
「主観を差し挟むことなく誰でもない誰かの視点から見る」というのは偏りや思い込みがなく正当な評価であることに通じます。
・贔屓目なし
「一方に肩入れするような見方をしないこと」という意味の言葉です。
「思い込みや先入観を排除し公平公正な目で見ること」を意味しており「誇張や誇大ではないありのまま」という意味で「掛け値なし」とよく似た表現です。
まとめ
「掛け値なし」という言葉は人を褒めたりすばらしさを伝えたりするときによく使われる表現です。
想いの強さを正しく理解するためにも言葉の意味を知っておきましょう。