魚介類に関わる産業を指す言葉として「漁業」と「水産業」があります。
どちらも普通に使われている言葉ですがこのふたつはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「漁業」と「水産業」の違いについて解説します。
「漁業」とは?
「漁業」とは、「食用を目的に魚介類を獲ったり養殖したりする産業」指す言葉です。
一般に「漁業」というと「漁師」のことを指します。
海や川、湖などで漁を行い魚をとって生計をたてる漁師たちが「漁業従事者」であり、そのような経済活動全体を指す産業として「漁業」という言葉が用いられます。
「漁業」が対象とするのは自然に増殖する魚や水生生物です。
もともとは海や川で魚介類を捕獲する活動に従事する者のみを指していましたが、近年は自らので魚介類を育てて出荷する養殖に携わるものも「漁業」に含みます。
「漁業」は人間の活動としては最古に分類される産業です。
古代の生活を知るのに役立つ貝塚からは人類の祖先に当たる生物が貝を拾って食用にしていたことがわかっています。
このように海や川にいる貝類を採取して食用にする行為は現代に通じる「漁業」の始まりです。
人類の多くは世界中の水辺で発展してきた歴史を持つことから、食用に適する魚介類が採取可能なほぼすべての地域で「漁業」が営まれています。
「漁業」の使い方
・彼は漁業に従事している。
・日本の漁業は転換期を迎えている。
・ヨーロッパの近代的な行教に学ぼう。
・空港新設により漁業への影響が懸念される。
「水産業」とは?
「水産業」とは、「魚介類など水産物全般の取り扱いに関わる産業」を指す言葉です。
水から産出される産物のことを「水産物」と言い一般的には魚や貝、海藻など魚介類全般を指します。
「水産業」とはそのような水産物に関わる仕事すべてを指す総称です。
魚介類を直接的に取り扱うすべての仕事が「水産業」に含まれます。
魚を取る人や加工する人、漁港で買い付ける人や輸送する人まで広義の意味で考えると「水産業」は非常に広い範囲が含まれます。
「水産業」には色々な考え方がありますが通常は「魚介類が捕獲されてから人々の口に入るまでの間に直接的に関わる仕事」を指します。
そのため魚を獲る仕事や輸送する仕事などは含まれますが、魚を取るのに必要な漁船乗せ造事業など水産物を直接利用しない業種は含みません。
「水産業」の使い方
・街の経済は水産業が大部分を占めている。
・水産業が傾くと影響が大きい。
・世界の水産業は捕獲から養殖にシフトしている。
・水産業保護のために補助金を新設する。
「漁業」と「水産業」の違い
「漁業」と「水産業」の違いは「水揚げに直接関わるかどうか」です。
「漁業」は漁や養殖など自ら直接水産物を水揚げする仕事を指します。
「水産業」は水産物を直接水揚げする仕事に加え水揚げされた魚介類を工場で加工したり保管や出荷、販売など消費者に届ける仕事も含まれます。
水産物全般に関わる「水産業」のうち直接水揚げに関わるのが「漁業」であり「漁業」は「水産業」の一部の業種を指す言葉です。
まとめ
「漁業」と「水産業」は似たような意味で使われることが多く混同されがちですが、指す内容が異なる別の言葉です。
それぞれの意味をしっかり理解してふさわしい言葉を使ってください。