裁判の進行を妨げる傍聴人等の声に対して、裁判長が「静粛に」と言いながら木槌を振り下ろしているというイメージを持っている方も多いでしょう。
この時持っているの木槌の正式名称は、「ガベル」というのですが、実際には日本の裁判所で、裁判長は「ガベル」を持っていません。
欧米のドラマがこのイメージを植え付けたのでしょう。
ここで使用した「静粛」とはどういう意味でしょうか。
また、似た語感の「粛清」とはどう違うのでしょうか。
この記事では、「粛清」と「静粛」の違いを分かりやすく説明していきます。
「粛清」とは?
「粛清」という言葉は、「粛」が「厳しく何かを実行すること」であり、「静」が「静かなこと」なので、「厳しく何かを実行して静かにさせる」という意味になります。
通常は、「対立する組織や人物を強制的に排除する」という特殊なシチュエーションでしか使用されない言葉です。
英語では、「purge」が最も近いでしょう。
「静粛」とは?
「静粛」とは、「静」も「粛」も「静かである」ことから、「静まり返った」状態を表します。
しかし、通常は、「静かな」状態というよりは、「静かにしてください」という呼びかけをするというシチュエーションでしか使用されない言葉です。
英語では、「quiet」でしょうか。
「粛清」と「静粛」の違い
「粛清」と「静粛」の違いを、分かりやすく解説します。
この2つの言葉は、「静」という文字がはいいているように、最終的には「静かである」という意味では、同じかもしれません。
しかし、根本的な成り立ちは全く違います。
つまり、「粛清」が、「対立するものを様々な手段で排除した後」であるのに対して、「静粛」は、「何らかの状態を経て訪れる静寂」なのです。
言い換えれば、「粛清」の後に「静粛」が来るということです。
独立して使用される場合は、「静粛」の前段階は「粛清」でない場合もたくさんあります。
「粛清」の例文
「粛清」の例文は以下のようになります。
・『スターリンがソビエト連邦で行った大規模な政治的弾圧のことを大粛清と呼びます』
・『社長派が会社の実験を獲得したことにより、会長派に属する役員の粛清が始まりました』
「静粛」の例文
「静粛」の例文は以下のようになります。
・『国会においては、当然の行動としてヤジが横行しているので、静粛を求める議長の声が響き渡ることが多いです』
・『現代において、本当に静粛を感じるような機会は極めて少ないと言えるでしょう』
まとめ
この記事では、「粛清」と「静粛」の違いを、解説してきました。
序文で説明したように、日本の裁判においては、裁判長は「ガベル」という木槌を持っていないのですが、共通のイメージとしては定着しています。
これは西洋の映画やドラマの内容と混同してしまうことから起こったことですが、このような勘違いはいろいろなところで起きています。
例えば、「ベルリンの壁」を西ベルリンと東ベルリンの真ん中にあった壁だと思っている人が多いと思いますが、実際には西ベルリンを丸く囲んだ壁でした。