労働に関する用語で「所定労働時間」や「法定労働時間」というものがありますが、これらは何が違うのでしょうか。
この記事では、「所定」と「法定」の違いを分かりやすく説明していきます。
「所定」とは?
「所定」とは、決められていること、決まっていることを意味します。
「所」という漢字は、動詞の前に置かれると行為の対象となる場所や理由などを示します。
そのため、「所定」とは、「定めるところ」、つまり定める対象を示す言葉です。
「所」を同じ意味で使う言葉としては、「所見」や「所在」があります。
類語は、「確定」「既定」です。
「所定」が単純に決まっていることを指しますが、「確定」は、はっきり決定すること、「既定」は、すでに決定していることをいいます。
「所定」は、英語に訳すと“fixed”、“appointed”になります。
「所定」の使い方
「所定の~」という場合には、あらかじめ決められた、指定されたという意味になります。
「所定労働時間」は、企業が就業規則などで定めた労働時間のことです。
法定労働時間の範囲内であれば自由に決定することができます。
毎月決まって支給される月例賃金のうち、所定労働時間の労働に対して支給される賃金を「所定内賃金」、所定労働時間以外の労働に対して支給される賃金のことを「所定外賃金」と言います。
「所定外賃金」の具体例は、休日出勤手当・深夜労働の割増賃金などです。
「法定」とは?
「法定」とは、法令によって定められていることやその事物を意味します。
「法定」は、英語で“legal”といいます。
同じ読みで「法廷」という言葉がありますが、こちらは裁判の行われる場所という意味なので注意しましょう。
「法定」の使い方
「法定労働時間」は、労働基準法で定められている労働時間の上限のことです。
「法定刑」は、刑罰法令において、各罪に対応して規定されている刑のことを言います。
物の使用の対価として生じる金銭やその他の物を「法定果実」といいますが、それに対して、果物や牛乳などの物の経済的用法に従って直接に収取される産出物のことを天然果実といいます。
「所定」と「法定」の違い
「法定」は、法律によって定められていることを指しますが、「所定」は、誰によって定められているかを問いません。
例えば、「法定労働時間」は、法律で定められていますが、「所定労働時間」は、企業によって定められいます。
「所定」の例文
・『住所と氏名を所定の欄に記入してください。』
・『所定の期日に提出できるように書類の作成を急ぐ。』
・『所定労働時間をこえて働いてしまった。』
・『所定の金額を超えた分については自己負担になるので注意してください。』
「法定」の例文
・『法定手続きに則て、申請書を提出する。』
・『強盗殺人の法定刑は非常に重い。』
・『私は未成年なので、その件については、法定代理人である母が対応します。』
・『法定労働時間を超過して働かされている。』
まとめ
「法定」は、法律が定めるものについてのみ使えますが、「所定」は、誰が定めているかに関係なく使える言葉です。