「戻る」と「戻す」は使い方が異なる言葉ですが、普段あまり意識せずに使い分けている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「戻る」と「戻す」の違いを分かりやすく説明していきます。
「戻る」とは?
「戻る」という言葉には複数の意味があります。
一つ目は、元の場所に帰る、二つ目は、進んだ方向と逆の方向へ引き返す、三つ目は、本来の持ち主のもとに帰る、四つ目は、元の状態にかえるという意味です。
また、「戻る」には、「もとる」という読み方もあります。
「もとる」と読む場合は、道理に背くという意味を持ちますが、その読み方の場合には「悖る」と書かれることがほとんどです。
「戻る」を表す英語としては、“go back”や“return”があります。
「戻る」の使い方
「~に戻る」という形で使われます。
この形で使われる場合には、それ単体ではどの意味で使われているか分からないので、文脈に応じて判断するようにしましょう。
「調子が戻る」は、普段の調子になることを指す表現です。
記憶を失った人が、失っていた記憶を思い出したことを指して「記憶が戻る」といいます。
「戻す」とは?
「戻す」とは、元の状態やあった場所などへ返す、水に浸したり解凍したりして加工する前の状態にするという意味です。
また、逆の方向へ返す、飲食した物を吐く、下がっていた相場が回復するという意味もあります。
「戻す」は、英語で“return”といいます。
嘔吐という意味で使われる場合は、“vomit”です。
「戻す」の使い方
「(もの)を戻す」という場合には、もともとあった場所に返すという意味になります。
「白紙に戻す」は、もとの何もなかった状態にすることを意味する慣用句です。
「計画を白紙に戻す」という形で使われます。
「戻る」と「戻す」の違い
「戻る」は、自動詞であるのに対して、「戻す」は、他動詞です。
自動詞とは、動作主体の動作・作用が他に及ばないで、それ自身の働きとして述べられる動詞のことです。
自動詞は、「~を」という目的語をとることができません。
具体的には、「走る」「寝る」などがあります。
一方、他動詞は、その動詞の表す動作や作用が直接他に働きかけたり、他を作り出したりする働きとして成り立つもののことです。
動作・作用の対象は「~を」の形で表されます。
「読む」、「投げる」などが他動詞にあたります。
「戻る」の例文
・『お昼ごろには戻るので、昼食を用意しておいてください。』
・『もうあの楽しかったころに戻ることはできない。』
・『忘れ物をしたので一回家に戻ります。』
・『彼に貸したお金が戻ってこない。』
「戻す」の例文
・『はさみを使ったら必ず元の場所に戻してください。』
・『新しいプロジェクトについては一旦白紙に戻そう。』
・『乾燥わかめを水で戻してからみそ汁に入れる。』
・『具合が悪くてさっき食べたうどんを戻してしまった。』
まとめ
「戻る」は自動詞で、「戻す」は他動詞です。
自動詞と他動詞の理解はなかなか難しいかもしれませんが、これを機に他の動詞でも意識してみましょう。