企業の業務を表す言葉として「祖業」と「本業」があります。
どちらも大切にするべき業務を指して使われますが具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「祖業」と「本業」の違いについて解説します。
「祖業」とは?
「祖業」とは「祖先が興し現在にまで受け継がれている業務」を指す言葉です。
一般に「祖業」という言葉は「企業が設立時に手がけていた業務」という意味で使われます。
企業は時代とともに変化するものであり、設立時に手がけていた業務がどんどん変遷して今に至るケースはよくあることです。
特に大企業ともなると業務拡大や多角化経営などにより複数の業務を手がけるケースが多く、ひとつの会社が何重もの業務に携わっているのも珍しくありません。
そのような数ある業務のうち祖先がもともと始めて今に至るまで引き継がれている業務をさして「祖業」と表現します。
例えば、世界的な自動車メーカー「トヨタ」を抱えるトヨタグループの始まりは「豊田自動織機製作所」という織物を加工する機会の製造事業です。
トヨタグループにはトヨタ自動車を始め大企業がいくつもありますが、企業の規模とは関係なく現在は「豊田自動織機」と名を変えて受け継がれている自動織機制作事業がトヨタにおける「祖業」です。
「祖業」の使い方
・設立以来祖業一筋で続いている会社。
・祖業の技術を応用して新事業に取り組む。
・外食部門で祖業の赤字を補填しているのが現状だ。
・祖業はさかなやだが現在でスーパーマーケット経営に注力している。
「本業」とは?
「本業」とは「本来の事業や職業」という意味の言葉です。
一般的に「本業」という言葉は「中心となる事業」や「主な収入源となる職業」など「その人や会社にとって最も重要で主要な事業や職業」という意味で使われています。
このような用法はもともとの意味から少し離れたもので、本来の意味での「本業」では「その人や会社の主観から見て中心となる重要な事業や職業」を指します。
スポーツ選手が活動費を稼ぐために飲食店を経営してお金を稼いでいる場合、収入面だけを見れば多くの稼ぎを得ている飲食店経営が「本業」となります。
しかし、本人の自意識の中ではスポーツ選手として活動するために飲食店経営をしているのですから「本業」はスポーツ選手であり飲食店経営は副業です。
このように「本業」は客観的な事実やデータだけで決まるものではなくあくまで本人の意識によって決まるものです。
利益のでない事業ややめたほうがメリットが多い仕事など外から見ればマイナスでしかない事業や仕事を自分の為あるいは世のため人のために「本業」にしている人や会社は少なくありません。
「本業」の使い方
・本業に影響しない程度に趣味を楽しむ。
・本業を疎かにすべきではない。
・本業だけあって見事な出来栄えだ。
・手を広げすぎてどれが本業かわからない。
「祖業」と「本業」の違い
「祖業」と「本業」の違いは「積み重ねてきた歴史」です。
「祖業」は祖先から受け継いでいる事業であり歴史によって規定され、新たに興すことはできません。
「本業」は主たる業務や職業であり自意識によって変わるほか、企業の場合は経営状態によっても変化し新しく生まれることもあります。
まとめ
「祖業」と「本業」は指している内容が全く異なる別の言葉です。
混同しやすい言葉なのでそれぞれの意味をきっちり理解して間違いのないようにしてください。