裁判で無罪を争うときなどに使われる言葉に「正当防衛」と「過剰防衛」があります。
このふたつはなんとなく意味はわかっていても具体的な基準などはわからないという人が多く、理解しないまま言葉だけがひとり歩きして使われることもありますがいったいどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「正当防衛」と「過剰防衛」の違いについて解説します。
「正当防衛」とは?
「正当防衛」とは「切迫しつつある暴力など他人から唐突に加えられる危害に対して自己を守ることを目的に行われる行為」という意味の言葉です。
警報では「正当防衛」を「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」と定義しています。
ややこしい表現ですが要するに「緊急に身を守るための行動」が「正当防衛」の意味合いです。
一般的には「身体や生命、財産など守るべき者が危険にさらされているときに仕方なくふるわれる暴力」という意味で使われます。
例えば「襲ってきた暴漢に対して身を守るために格闘で応じる」「暴れる人間を取り押さえてロープなどで拘束する」「刃物で襲いかかってくる相手を石で殴りつけて動けなくする」などが「正当防衛」に当たります。
その行為単体で見れば傷害罪や暴行罪に該当する行為であるが緊急防衛のための必要性が認められるものが「正当防衛」となり、やむを得ない行為であるとされ罪には問われません。
「正当防衛」の使い方
・彼の振るった暴力は正当防衛であるとされ無罪放免になった。
・正当防衛かどうかはあなたが判断することではない。
・相手を挑発していたのだから正当防衛は認められないだろう。
・結果的に正当防衛が認められることになりホッと胸を撫で下ろす。
「過剰防衛」とは?
「過剰防衛」とは「防衛のためと認められる範囲を超えた行為」という意味で使われる言葉です。
暴力を含む行為が防衛のために必要であると認められるためには「不正の侵害」「急迫性」「防衛の意思」「必要性」「相当性」のすべてを満たす必要があります。
簡単に言うならば「その行為をする以外に差し迫った危険を回避する方法がない状況で身を守るために仕方なく行われた防衛のための行為」に当てはまらない行為が「過剰防衛」です。
「過剰防衛」を一言で表すなら「やりすぎ」です。
いくら防衛のためとはいえやりすぎた行為が「過剰防衛」に当たります。
「抵抗の意思を失っているのに暴力をふるう」「身動きができないのにさらにきつく縛り上げる」「危険が差し迫っていないのに先回りして取り押さえる」などが「過剰防衛」に当たります。
「過剰防衛」は通常の犯罪と同様に扱われ裁判で有罪判決が降る可能性があります。
「過剰防衛」の使い方
・この怪我を見れば過剰防衛は明らかだ。
・手加減を覚えなければ過剰防衛をしかねない。
・恐怖にかられ夢中で振るった暴力が過剰防衛認定されてしまった。
・武器を持出したのなら過剰防衛と言われても仕方がない。
「正当防衛」と「過剰防衛」の違い
「正当防衛」と「過剰防衛」の違いは、防衛のために必要最低限の行為であるか否かです。
「正当防衛」は危険を回避するためにやむを得ず行われる必要最低限の行為です。
その範囲を超えたものが「過剰防衛」です。
身を守るためなら「正当防衛」ですが必要以上の行為は「過剰防衛」となります。
まとめ
「正当防衛」と「過剰防衛」はいつなんどき自分の身に降りかかるかわからないことであり無関係ではいられません。
もしそのような状況に陥ったら自己判断せず必弁護士に相談しましょう。