「屠る」
この「屠る」と見て、パッと読むことができる人もそうは居ないでしょう。
「屠」の漢字には音読みと訓読みがありますが、先の音読みは知っていても、訓読みと言われると困ってしまう人も多いのではないでしょうか。
「屠る」は、もちろん訓読みで発音する言葉で、その読み方は「ほふる」です。
「屠る」の意味
屠るとは、「バラバラに裂いて殺す」という何とも物騒な言葉です。
単に「殺す」、「倒す」という意味で使うこともありますが、この言葉を見掛けた時には、多くは「裂く」という行為が絡んでいると考えて構いません。
「屠」は音読みでは「と」と読みます。
「屠殺場」(とさつば、とさつじょう)という言葉あるので、音読みは知っている人も多いでしょう。
ですが、その訓読みが「ほふ」だとは、知らないとまず分かりません。
「屠る」の類語と解釈
屠るの「屠」が含まれる「屠殺場」(牛や豚、馬などをバラバラにして食肉にする施設)は、放送禁止用語に指定されています。
その為、この言葉は放送などでは主に「食肉処理場」と表記されます。
「屠る」自体にそのような制限は掛かっていませんが、やはり「屠」の漢字にいいイメージがない為、放送などで使うことはまずありません。
そこで、代わりに使われているのが「解体」です。
この「解体」という言葉にも「バラバラにする」という意味がありますが、直接「殺す」という響きがない為、メディアなどでも普通に使うことができます。
よって、「屠る」は一般には「解体する」と置き換えて使うものだと考えていいでしょう。
「屠る」の英語と解釈
英語にちょうど「屠る」に該当する言葉があり、“massacre”と表記します。
「マサカー」と発音し、意味は「屠殺」(バラバラにして殺す)です。
これも「屠ると同様に、」残酷この上ない言葉ながら、映画のタイトルやブランド名、店名などに使われている為、一度はどこかで見たことがある人も多いでしょう。
尚、こちらもよく聞く、見た目と発音が似ている“masquerade”(マスカーレード)は「虚構」という意味の言葉で、“massacre”とは何の関係もありません。
「屠る」の言葉の使い方
屠るは上の理由から、あまり使わない言葉です。
また、読み方が「ほふる」だと聞いて、これを旧仮名遣いだと間違えてしまうことがあるので注意してください。
読み方のルール(現代仮名遣いへの変換)に従うと、「ほふる」は「ほうる」となりますが、この言葉は元から「ほふる」なので、そうとは読みません。
口語で使う時にはこれに気を付けてください。
「屠る」を使った例文・解釈
屠るを使った例文です。
それほど見聞きしたり、使う機会はない言葉ですが、用例は覚えておいてもいいでしょう。
「屠る」の例文1
「パーティ全員であの敵を屠り殺そう」
「屠る」という言葉は、このようにゲーム内ではそれなりに使われます。
屠ると言っている時点で、既に「殺す」という意味を含んでいますが、このような「屠り殺す」という形でも普通に使われます。
特に誤用という訳ではありません。
「屠る」の例文2
「引退した競走馬は屠って食肉にされるらしい」
全ての引退した馬がそうなる訳ではありませんが、繁殖にあがれるような血統や成績のない馬や、競技馬や乗馬などにもならない馬のほとんどは、そのように処理されているのが現実です。
「屠る」の例文3
「食肉加工の為の動物を屠る施設の建設に対し、反対運動が上がっているらしい」
そのような施設が近くにできるのは反対だという人も居るでしょう。
しかし、どこかにないことには食肉への加工が行えません。
難しいところではありますが、ある程度の理解は必要です。
「屠る」の例文4
「昔のヨーロッパでは、屠られて殺されるという方法で死刑を行っていた国もあったらしい」
日本でも牛引き(牛に四肢を違う方向に引かせて引き裂く)による惨殺な死刑が行われていた過去があるので、他の国のことは言えませんが、どちらも今では考えられないことです。