「急先鋒」とは
「きゅうせんぽう」と読み、現在では主に政治や文化の動きを表すのに、新聞その他のメディアで目にする事のある言葉です。
似た言葉には「一番槍」「火付け役」「先駆者」などが挙げられます。
「急先鋒」の意味
大まかに言うと「最前線」「最前線の人」という意味があります。
この前線というのは争いごとであり、つまりいくさで最も多く血が流れる場所です。
転じて、政治、社会を動かす上での議論、技術改革のしのぎの削り合いなどで、その分野で真っ先に行動する事や、その人そのものを指してこう呼びます。
団体競技などで一番手を「先鋒」と呼んだりもしますが、スポーツチームのそもそもが軍隊とすれば、一番前で敵を迎え撃つのが先鋒の役割であり、さらにその中でも真っ先に、勢い良く突撃していくさまを「急」の字に表し、(遠目から見ても)特に目立つ存在であるという事です。
「急先鋒」の言葉の使い方
元々の意味の戦争は、現在でも絶えないとはいえその様式が古代とすっかり変わってしまったので、ドラマや映画で再現されるような伝統的な名乗りや歩兵の突撃といったものはあまり見られず、技術や情報がその主な展開となっています。
よってこの言葉が使われるのは改革を目指す政治家とか、また社会活動、つまり政治に対する希望や反対を、世論の代表として行う団体(の、リーダー的人物)、あるいは医学など何らかの研究分野で最先端を行っていたり、また誰もやった事のないような新しい事に挑戦している人物、ある思想を唱える人物など、「一番乗りで、かつ突出して目立っている人」の代名詞として、とても広い意味で使われます。
研究が目的の科学者などは別に何かと争っているわけではありませんが、他の学者としのぎを削り、日々競い合っているという観点では似たようなものであるともいえます。
英語で「急先鋒」を表現するなら、急進的、先鋭的を表す“radical”(外来語では「ラジカル」と表記)が最もふさわしいといえますが、他にも最前線を意味する“forefront”なども挙げられます。
「急先鋒」を使った短文・解釈
この言葉自体には良い意味も悪い意味もなく、何かのパイオニア的存在を表すのに用います。
以下に短い例を挙げましたので見てみましょう。
「急先鋒」の例文1
「時代の急先鋒を担っている」
我々がこんにち、何の気なしに物を扱ったり何かの概念に基づいて行動できるのは、全て先人の努力と挑戦によるものです。
日常生活でさえ、何か新しい事を始めるのはなかなか困難な事です。
ましてそれが誰もやっていないような見本のない事であれば、二の足を踏むのも当然といえるでしょう。
当然歴史の中で人目に触れない数多くの失敗や犠牲があったはずですが、それを恐れずあえて挑む気概があったからこそ、現在の社会は成り立っているのです。
時には嘲笑にさらされながらも時代を変えてきた人々は、それだけで讃えるべき存在ではないでしょうか。
「急先鋒」の例文2
「改革の急先鋒」
主にニュースの政治欄に見られる表現です。
大雑把に分類すると、現状を保守したがるのは大抵老人で、このように真っ先に改革を唱え、行動するのは比較的若手が多いといえます。
「急先鋒」の例文3
「彼は『急先鋒』という二つ名を持っていた」
フィクションの中での急先鋒の好例です。
「水滸伝」に登場する英雄集団、梁山泊の一人に索超という人物がいますが、非常に気が短く向こう見ずな性格からこの渾名(あだな)が付けられたといいます。
「急先鋒」の例文4
「脱退の急先鋒である彼の意図と、団体のこれからは全く不明瞭である」
こうした何かに異を唱える行為でも、急先鋒という言葉を使う事ができます。
近年での大きな例を挙げるとすると、やはり2016年から現在も続く、イギリスの欧州連合脱退問題でしょう。
先鋒ということは今後他の国も後を追う可能性もあるわけで、その動向は決して他人事ではないものです。