この記事では、「標本」と「剥製」の違いを分かりやすく説明していきます。
「標本」とは?
「標本」とは、全体の中から観測や調査対象として取り出した一部分のことであり、英語では、“sample”といわれるものです。
その他の意味として、見本や典型などの意味合いがあり、現在では使われなくなりつつありますが、例えば、成金の標本みたいな人という表現があります。
「標本」はサンプルという言葉でイメージされる意味合いですが、例えば、データのサンプルを抽出するといった使われ方があります。
「標本」は、研究分野や扱う分野によって、様々な意味合いがあり、統計学では、推論するために全体像から一部分を抽出して調査や検査対象として扱うデータのことをさしますし、音響分野では、アナログ音源からデジタル音源に変換する過程で扱うデータのことをさします。
「標本」と聞くと、一般的に動植物のことをイメージしてしまう理由は、動植物や鉱物、化石などの全体または一部を、繰り返して観察できる研究資料とするために、適当な処理を施して保存されているものの呼び名が「標本」と省略されているからです。
ここでいう「標本」には、防腐や防虫処理を施して保存することを目的として作られるもので、アルコールやホルマリンの水溶液に漬けられた液浸標本や、乾燥させて作られる乾燥標本、「剥製標本」などがあります。
一般的にイメージしやすい昆虫や押し花の「標本」は、乾燥標本である場合が大半です。
「剥製」とは?
「剥製」とは、正確に言えば「剥製標本」となり、動物の外見的な特徴を残して保存する動物標本の一種です。
「剥製」は、主に脊椎動物を対象として作られるもので、一般的には、動物の筋肉、内臓などの腐敗しやすい部分を取り除いて、皮に防腐処理を施し、各部位に芯となる素材を入れて外形を復元し、乾燥したものです。
一般的に見られる「剥製」は、展示用、観賞用として加工したもので、防腐や防虫処理を施して、目がガラスやプラスチックなどで作られており、生前の姿やポーズ、表情などにもこだわって再現された「本剥製標本」です。
学術的な研究のために防腐や防虫処理を施して、最低限の処理を施したものは、「仮剥製標本」と呼び、ポージングや表情などにこだわらない形で保存されていますが、再加工して「本剥製標本」とされる場合もあります。
一般的に目にする機会のない「仮剥製標本」の状態であっても、「剥製」の一種になることには注意が必要です。
「標本」と「剥製」の違い
「標本」は、サンプルとも呼ばれ、全体の中から観測や調査対象として取り出した一部分のことをさすのに対し、「剥製」は、剥製標本の略称で、動物の外見的な特徴を残して保存される動物標本の一種です。
「標本」は、一般的に、昆虫標本や、押し花標本、剥製標本などの言葉が省略された形でイメージされやすいことに注意が必要です。
まとめ
「標本」と「剥製」の違いについて説明しました。
「標本」は、全体の中から観測や調査対象として取り出した一部分のことであり、英語で“sample”といわれるものであるのに対し、動物の外見的な特徴を残して保存する動物標本の一種です。
「標本」は、他に見本や典型などの意味があることや、一般的に昆虫標本や動物標本を省略して、「標本」と呼ぶことも覚えておきましょう。