「此方」
「此方」という漢字を見たことがある人はどのくらいいらっしゃるでしょうか?読み方を知れば、「何だ簡単じゃないか」と思うかもしれませんが、この言葉をスラスラと読める人は、そんなに多くはないかもしれません。
「此方」は「こちら」や「こなた」、「こっち」という読み方をする言葉ですが、1つの言葉でこれだけの発音をする言葉は、珍しいのではないかと思います。
読み方を知れば、この言葉の意味は決して難しくはないと思います。
「此方」の意味
「此方」の「此」という文字には「ここ」や「この」、「これ」といったような意味があります。
また、「方」という文字には「方向」と「場所」という意味があります。
この2つの文字を組み合わせることによってよって、「こちらのほう」や「自分に近いほう」といった意味を示しています。
このようなことから、「此方(こちら)」というと、自分への方向や自分に近い側の位置を示す言葉となり、「自分側にある方向」や「話し手のいる方向」、「自分の関心が向いている方向」、「今話題になっている方向」、「手前側」「ここの場所」、「私ども、私(側)」といったことを指しています。
「此方」の言葉の使い方
「此方」を「こちら」と発音する場合は少し丁寧な表現となり、口語的で平素な表現だと「こっち」という発音で使うことになります。
「こなた」は、かなり古い書物や文章の中で、使われる表現で、日常会話の中では多用することは見られません。
また、「此方(こちら)」と合わせて「そちら」や「あちら」、「どちら」という言葉と対比させながら、方向を示す場合にも使われます。
また、方向を示すだけでなく人を示す場合にも使われ、「此方(こちら)の方は、どちら様でしょうか?」というような使い方ができます。
方向の「そちら」や「あちら」と同じように「あなた」、「どなた」も人を示す言葉として、「此方(こちら)」と対比させながら使い分けすることになります。
「此方」を使った例文・短文(解釈)
では、ここで「此方」を使った例文を見ていくことにしましょう。
「此方」の例文1
「あっちの都合ばかり一方的に言って、少しは此方(こっち)の身にもなってほしい」
こんな愚痴をこぼしている人のセリフを聞いたことがある人は結構いるのではないかと思います。
奥さんの愚痴だったり、職場の人の発言だったりととても身近な会話の中のセリフでしょう。
「此方」の例文2
「此方(こちら)は、先代の社長だった山根さんです。 昔なら今のように気軽にお会いすることができない人ですよ」
こんな会話も時々あるのではないでしょうか?「此方」は「こちら」と読むことで、少し丁寧なセリフになっていることが理解できることでしょう。
「此方」の例文3
「此方(こちら)の製品は、先月リリースしたばかりの新製品なので、まだ市場にはそんなに多くは出回ってはいません」
この例文でも「こちら」という読み方をしていますが、取引先や顧客に製品を説明している場面なのか、やはり丁寧な言葉となっていますね。
「此方」の例文4
「此方(こっち)へ来るように言われて訪ねて来たのですが、此方(こちら)が受付窓口じゃないんですか?」
忘れ物受付やコンサートチケット売場で少し揉めそうな会話のニュアンスがあるようです。
「こっち」という発音になっている「此方」なので、かなりライトな感覚で使われていることが分かります。
電車の中で、置き忘れたバッグを取りに行こうと紛失物預り所に行こうとした人が、別の窓口に行って、少し怒り口調で尋ねているような感じもします。
「あっち」、「こっち」といくつかの窓口でたらい回しにされた挙げ句、結局は最初に尋ねた窓口に戻ってしまったのなら、もう目も当てられません。