何かが増えたり良くなったりなどの変化や増加を表す言葉に『ますます』という言葉があります。
この言葉自体は日常的に口語でも使われているので馴染みがありますが、書籍やビジネス文章、特に公式文章などを見る時にふと気づいたことはありませんでしょうか。
それは『益々』という場合と『増々』という言葉です。
どちらも同じ『ますます』という読み方をしますが、何が違うのでしょうか。
実は非常に微妙なニュアンスの違いがあるので今回はここに焦点を宛てて見て参りましょう。
この記事では「益々」と「増々」の違いを分かりやすく説明していきます。
「益々」とは
この単語は『物事や事象などの程度が一層はなはだしくなる様子』を表す単語です。
例えば、年を取っても元気な老人を『老いてなお益々盛んである。』という表現や少し堅苦しい正式文章などで、『益々のご健勝のこととお慶び申し上げます。』という文をご覧になったことがある方は多いと思います。
『益』は『利益』という言葉にも使われる通り、もうけであったり、役に立ったりためになることを表した言葉です。
これを2回続けて使うことで、良いことの程度が強くなっているということを表し『益々』としています。
「増々」とは
こちらは漢字が先ほどと違い『増す』という言葉の通りイメージがしやすいのではないかと思います。
『増す』という動詞を重ねたままの意味を持ち、『程度が強くなる』という状況を表す副詞です。
先ほどの『益々』と同音異義語かと思いきや、まさかの全く同じ意味を持つ言葉であるというのはどこか不思議な感覚にさせる言葉です。
「益々」と「増々」の違い
先ほどご紹介した通り、『益々』と『増々』は言葉自体は全く同じ意味を持つ単語です。
ですが、日本人は使われている漢字の意味を深く考える文化があります。
代表例がビジネスシーンです。
公式文章の冒頭部分で定型の言い回しがありますが、ここで使われている言葉は『増々』ではなく、『益々』であることが殆どです。
これは『益』という漢字が持つ良いイメージを大事にした結果使われている単語です。
実際、辞書やパソコン、スマートフォンの変換では『益々』の方が先に出ます。
もちろん『増々』としても全く問題はないのですが、『喜ぶ』を『慶ぶ』とする習慣がある様に出来るだけめでたい前向きな言葉を基準に覚えて使われた方が無難です。
まとめ
如何でしたでしょうか。
同じ読みで違う漢字を使う言葉を同訓異義語と呼びます。
例えば『川』と『河』や『会う』と『逢う』などです。
それぞれの漢字の背景をよく見て状況に応じて使うのがこの同訓異義語ですが、ビジネスシーンや冠婚葬祭などの正式な場では特に注意して使われるケースが多いので、是非とも同じ言い回しでも好ましい方の漢字を使えるようにしていくようにすると、相手に好意や敬意が『益々』伝わりますので是非調べてみて下さい。