この記事では、「素寒貧」の意味を分かりやすく説明していきます。
「素寒貧」とは?意味
素寒貧(読み方・すかんぴん)とは、非常に貧しくてお金がなく、何も持っていないこと、また、そのような状態の人を意味します。
強調を表す接頭語の「素」、寒さの「寒」、貧しさの「貧」を組み合わせているため、いかにも貧しくみすぼらしい様子を表す言葉となっています。
「素寒貧」の概要
素寒貧は、三国志に登場する石徳林(せきとくりん)という人物に由来するとの説があり、石徳林は若かりし頃、詩経や尚書の勉強に励んでいましたが、戦乱が続く世に嫌気がさし、次第に人と会うことを避け、乞食のような生活を始めます。
このときに里の人々が彼の名前を聞いても答えなかったため、見た目から「寒貧」と呼ばれるようになり、素寒貧の語源になったということです。
日本では江戸時代から使われていた記録があり、同時代に盛んに出版された咄本(はなしぼん)の正直咄大鑑(1687年・はなしぼん・しょうじきばなしおおかがみ)に「いつも出入しけるすかんひんの牢人来りけるに」と記述されているほか、明治時代に執筆された小説の当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙著〉に「余融があっての道楽なら、げに御もっともな事なれども、素寒貧(スカンピン)な書生の身分で」と記述されています。
このように江戸時代から庶民の間で「非常に貧しくお金がない状態」を表す言葉として広まり、現在使われるに至っています。
「素寒貧」の言葉の使い方や使われ方
この言葉は、客観的に貧乏であることを表すよりも、貧乏な人を罵る場合や、そのような立場にいる自分を自嘲する場面で多く用いられます。
(使用例)
・コロナ禍で観光業が大打撃を受け、うちの旅館も素寒貧だ
・パチンコで有り金を使い果たしたので当分、素寒貧だ
・寒貧のお前にこのお金が払えるわけないだろう
「素寒貧」の類語や言いかえ
「素寒貧」の類語には、「手許不如意(てもとふにょい)」、「赤貧」、「一文無し」などがあります。
「手許不如意」は、手許金が意の如くならないとの意味から、家計が苦しくお金がなくこと、「赤貧」は、赤の文字が「赤ちゃん」のように何もなくありのままの意味を持つことから、極めて貧しく何一つ持ち物がないこと、「一文無し」は、一文が一銭の十分の一の最下位の通貨単位であることから、ごく僅かなお金もないことをそれぞれ表しています。
また、言いかえは、「空っ穴(からっけつ)」、「すっからかん」、「おけら」などがあります。
「空っ穴」は、金銭・財産などを全く持っていないこと、「すっからかん」は、からっぽで中身が何も無く、何一つ残っていないことを表しています。
「おけら」は、一文無しを意味し、その語源は諸説ありますが、昆虫の螻蛄(おけら)が前から見ると万歳しているように見えることから、一文無しのお手あげ状態を揶揄しているとの説が有力とされています。
まとめ
素寒貧は江戸時代から庶民の間で使われ始め、非常に貧しくてお金がないことや、その状態にある人を指し示す言葉として定着しています。
自らにお金がないことを自虐、自嘲する場合に用いられることが多く、貧しい様子が字面からも漂ってきますが、汎用的に使う際は注意が必要です。