「胎生」と「卵胎生」は両方とも、生物の出産に関するメカニズムです。
いずれも卵生と違い、母体の胎内から子供が生まれてきますが、その違いがどこにあるのかは難しい問題と言えるでしょう。
この記事では、「胎生」と「卵胎生」の違いを分かりやすく説明していきます。
「胎生」とは?
「胎生」は子供が母親の胎内で、母体から栄養を受けて成長してから出産されるのが特徴です。
我々人類をはじめ、哺乳類ではよく見られる形式となります。
母体から栄養をもらって、成熟してから生まれるため、子供にとってはかなり好条件な出産方法と言えるでしょう。
母親から栄養を受け取る方法は主に二つあります。
一つ目がへその緒などの器官を通して、直接栄養をもらう方法です。
二つ目はサメなどが当てはまりますが、母親の胎内で食事をもらうものがあります。
ミルクなどをもらう種類もいれば、子供同士で共食いして、強いものが生き残る場合もあるのです。
「卵胎生」とは?
卵が母親の胎内で孵化して、そこで卵黄の栄養で子供が育ち、一定の大きさになると出産されるのが「卵胎生」です。
特に魚類によくみられるタイプです。
卵生の魚類は産卵してから精子を振りかけて受精しますが、「卵胎生」はそうではありません。
母親の体内に卵がある状態で性交し、そのまま孵化するまで胎内で育てます。
後は卵黄の栄養を補給して、子供が大きくなるのです。
「卵胎生」の具体例としてはシーラカンスやグッピーが良く知られています。
他にはカメレオンや蛇、トカゲの一種が「卵胎生」です。
古くは海竜の一部も、この出産メカニズムを持っていることがわかっています。
「胎生」と「卵胎生」の違い
「胎生」と「卵胎生」の違いを、分かりやすく解説します。
まず、この両者の大きな違いは、母親の体内で母体から栄養を受け取るかどうかです。
何らかの手段で栄養をもらっていたら「胎生」で、そうでないなら「卵胎生」とされています。
ただし、この両者の区別はかなりあいまいで、専門家も悩むケースが珍しくありません。
実際に、「卵胎生」とされた生物が、「胎生」に分類しなおされた例もあります。
どういう事かと言うと、「卵胎生」の子供が実は母親の体内で、粘膜の一部を食べていたり、無精卵を食べたりする種類も発見されました。
この結果、「卵胎生」と「胎生」の境界線があいまいになってきたのです。
現在では同じ種類であっても文献によって、「胎生」と「卵胎生」両方の表記が見当たるほどですから、この両者を厳密に区別するのは困難でしょう。
まとめ
「胎生」と「卵胎生」は過去にはざっくりと、母体から栄養をもらえるかどうかで分けられてきました。
しかし、研究が進んだ結果、「卵胎生」と分類された生物も母親から栄養をもらっているように見えるものが多数見つかり、境界線は曖昧になっています。
実際には「胎生」と「卵胎生」のいずれなのか難しい生物もいますので、そこまで、この区分についてムキになる必要はなさそうです。