この記事では、「近隣」と「隣接」の違いを分かりやすく説明していきます。
「近隣」とは?
「近隣」(きんりん)は、「近隣諸国」「近隣の住民」など、ニュースでよく耳にする言葉です。
「近い」「となり」が組み合わされたこの言葉は、隣りあい近い状態にあることを意味します。
子供や親しい人とのくだけた会話では「近く」「そば」「まわり」など、簡単に表現するのが一般的です。
同義語には「近所」「最寄り」「近場」「周辺」「付近」などがあります。
「近隣」の使い方
「近隣の村々」「近隣にある娯楽施設」など、「近隣」は近くにあるということを表現するときに使う言葉です。
ガイドブックなどを読むと、よく目にします。
大まかな地理情報を理解するのには役立ちますが、どれほど近いのか厳密に理解するためには「近隣」だけでは不十分です。
そのため「車で10分にある近隣の村」など、距離の詳細を付け加えるのが一般的です。
また自分の住居からすぐ近くに住む人や建っている建造物、もしくは地名を表すときには「近所」と表現する方が一般的です。
「近所の金子さん」や「近所の図書館」などがその例です。
「隣接」とは?
「隣接」は(りんせつ)と読みます。
漢字の「隣」と「接」から分かるように、隣と接するという意味をあらわしています。
「隣」は、「隣に座る」「隣の家」など、人や建物がすぐ横にあることを示します。
同じような意味を持つ言葉に「横」があります。
「横に座る」は「隣に座る」と同じ行動を示します。
「接」は、訓読みで(つ(ぐ))と読みます。
例は「その部分を接ぎ合わせる」です。
この漢字が持つ意味は、2つ以上のものをつないで1つにすることです。
このことから、「隣接」は、隣とつながっている、すなわち非常に近いという意味を持ちます。
簡単に表現するなら「となり」「横」でも十分です。
「隣接」の使い方
「隣接している佐藤さん」「そこの隣接したビル」「横浜市に隣接している地域」など、「隣接」は人や建造物や場所が何かと隣り合って接していて、共通の境界線がある場合に使います。
また、「となり」「横」とも言い換えられますが、ビジネス文書、学術文書、公式文書などでは、「隣接」を使うことが一般的です。
「近隣」と「隣接」の違い
「近隣」と「隣接」はとても似た意味を持つ言葉ですが、この2つの言葉には、はっきりとした違いがあります。
「近隣」は「近隣にあるの」ように「ある」という状態を表す言葉と一緒に使い、「隣接」は、「隣接する」のように「する」という動きを表す言葉と一緒に使います。
そのほかにも「近隣」は、共通の境界線を持つかどうか定かではないのに対し、「隣接」は共通の境界線を持つことが明らかです。
「隣接した佐藤さん」と聞けば、誰でも土地が隣り合っているお隣さんだと理解できます。
つまり境界線を共有していない場合に、「隣接」を使うのは正しくありません。
「近隣」の例文
・『近隣の山々では、もう紅葉が色づき始めました』
・『近隣住民の反対で、今度の計画を推進することはできませんでした』
・『草津温泉の近隣には、いくつかスキー場があります』
・『この知らせは、近隣諸国にまで広がりました』
「隣接」の例文
・『隣接している市町村の要請で、そうすると決定しました』
・『その劇場は、市役所に隣接して建っています』
・『うちは小学校が隣接しているので、子供の声がよく聞こえます』
・『私は、あの高いビルに隣接しているマンションに住んでいます』
まとめ
「近隣」と「隣接」は、近くにあることを表現するときに使う言葉です。
どちらも少々かしこまった表現になります。
また「近隣」は、共通の境界線を持つかどうか不明確ですが、「隣接」では境界線を共有していることは明らかです。