「三法印(さんぽういん)」という言葉をきいたことがありますか。
仏教において3つの根本的な理念を示す仏教用語です。
その3つの理念とは「諸行無常」、「諸法無我」、「涅槃寂静」です。
このうち二つの「諸行無常」と「諸法無我」はいずれも「諸」、「無」の漢字を使うので混乱しがちです。
しかし意味は全く異なります。
この記事では、「諸行無常」と「諸法無我」の違いを分かりやすく説明していきます。
「諸行無常」とは?
「しょぎょうむじょう」と読みます。
「万物は常に変化して、少しの間もとどまらない」という世界観を表しています。
「諸行」とは、因縁(人の力ではコントロールできない関係)によって生じた、この世の中一切の事物を示します。
「無常」はその字の通り「常に無」。
どんなものも、変化していくことを言います。
「諸行無常」の使い方
「諸行無常」が使用された代表的な文をみてみましょう。
・『祇園精舎の鐘の声「諸行無常」の響きあり』
平家物語の冒頭部分です。
平家にあらねば人にあらずと言われるほど栄えた一族でしたが、わずか20年ほどの治世で滅びました。
あっけない繁栄の幕切れを「諸行無常」で表しています。
・『昔あった豪邸が駐車場になってしまい、これぞ「諸行無常」だと思いました』 ・『とても人気があったタレントなのに、全くテレビでみなくなったので、「諸行無常」を感じました』
「諸法無我」とは?
「しょほうむが」と読みます。
すべてのもの事は、永遠で不変の実態や我(自分) をもっているわけではないという考え方です。
「諸法」とは「すべてのもの事」を表しています。
「我」とは、私たちが日ごろ使う「自分たち」とは異なる意味で使われており、仏教用語で「万物それぞれの永遠・不変の実態」を言います。
「諸法」は、互いに影響し、何一つとして単体で存在していないという世界観です。
「諸法無我」の使い方
「諸法無我」が使用される代表的な例文をみてみましょう。
・『最近の世界情勢は、まさに「諸法無我」といえる状況です』
・『「諸法無我」を思えば、このような事態に陥ったことも驚くに値しません』
・『「諸法無我」の世のなかで、あなたの思う通りいかないのは当たり前です』
「諸行無常」と「諸法無我」の違い
それでは「諸行無常」と「諸法無我」の違いを、改めて整理してみましょう。
「諸行無常」は」「すべてのものは、変化する」という意味で、「諸法無我」は「すべてのものは、互いにつながっている」という意味です。
いずれも「絶対的な個」を否定する世界観です。
使い分けですが、「世の移り変わりや変化」を強調したいときは「諸行無常」、「因縁や複雑に絡んだ関係」を強く感じる場合は「諸法無我」を選ぶと良いでしょう。
まとめ
この記事では「諸行無常」と「諸法無我」の違いをみてきました。
いずれも日本人の精神世界に大きな影響を与えてきた言葉です。
現代の私たちにも生きる上でのヒントを与えてくれるかもしれません。
意味や違いを正しく理解して間違えないようにしましょう。