「未必の故意」とは?
「未必の故意」という言葉を知っているでしょうか。
ほとんどの人が知らないと答えると思います。
「未必の故意」は「みひつのこい」と読みます。
推理小説やミステリー小説が好きな人、あるいは警察を舞台にしたドラマが好きな人などは、「未必の故意」という言葉をすでに知っているかもしれません。
そんな事件を題材にした作品好きの人なら知っておきたい言葉、「未必の故意」の意味や使い方を紹介します。
「未必の故意」の意味
「未必の故意」にはどのような意味があるでしょうか。
「未必の故意」という言葉は、殺人事件などの裁判などで使われる言葉です。
確定的に犯罪をする気持ちはないけれど、結果的に『犯罪行為になっても構わない』と思って犯行に及ぶ、容疑者の心理を「未必の故意」と言います。
殺人事件を裁く時、犯人に明確な殺意があるかどうかが重要なポイントになりますが、仮に殺意がないケースでも、「未必の故意」だと判断されれば、殺人罪が適用されます。
つまり、殺そうという明確な意思がなくても、相手が死ぬかもしれないという認識があれば、「未必の故意」となり、殺人罪が適用されるという事です。
例えば、自動車に乗って歩道に向かって突進した時、歩行者を殺そうとする明確な意思がなくても、「ぶつかったら死ぬだろう」と思って運転した場合、「未必の故意」となります。
「未必の故意」の言葉の使い方
「未必の故意」という言葉を、どのように使えばいいでしょうか。
「未必の故意」は法律用語ですので、日常生活で使う事はほとんどないでしょう。
しかし、新聞やテレビを通じて、殺人事件などの詳細を知った時に、「これは『未必の故意』だね」などと、想像する事ができるでしょう。
また、殺人事件の裁判の傍聴などに行った時も、「明確な殺意」があるかどうか、あるいは「未必の故意」があるかどうかなど、裁判官のような気持ちで推理する事ができるかもしれません。
このように、「未必の故意」は、日常生活では使いにくいですが、事件がらみのニュースを見た時に使う事ができそうです。
「未必の故意」を使った例文
「未必の故意」を使った例文を紹介します。
様々な場面における、「未必の故意」を使った文章を見て、この言葉の使い方のコツを覚えましょう。
「未必の故意」の例文1
「路上で激しいケンカが起きた。AがBを滅茶苦茶に殴ったため、Bが死亡した。Aに明確な殺意はなかったが、『このまま殴り続ければ死ぬかもしれない』という気持ちがある事が分かったので、『未必の故意』が認められ殺人罪が適用された」
この例文のような事件が、実際に起こっています。
この場合のAは、Bの事を殺すために殴っていませんが、Bが死ぬかもしれないという認識があったため、「未必の故意」が認められています。
「未必の故意」の例文2
「ペットボトルの水の中に、毒を入れて公園に放置したCが逮捕された。Cが置いた水を飲んだ人が死んだためだ。Cには『もし、この水を誰かが拾って飲んだら死ぬかもしれない』という認識が合ったので、『未必の故意』が認められ、殺人罪が適用された」
この例文のCの行為も、明確な殺意はないものの、「未必の故意」が認められます。
明らかに誰かが死ぬと分かっているような行動を取ると、「未必の故意」が認められ殺人罪になります。
「殺人」と「過失」の違い
「殺人」と「過失致死」には大きな違いがあります。
「殺人」には、「誰かを殺そう」という意思があり、「過失致死」には、「誰かを殺そう」という意思がないという違いがあります。
「故意」で人を殺すのか、「過失」で人を殺すのかでは、罪の重さが違います。
「未必の故意」が認められた場合は、「過失」ではなく「故意」になります。