農業従事者を示す言葉といえば、何を思い浮かべますか。
よくきくのが「百姓」と「農家」ではないでしょうか。
しかし、この二つの言葉の違いや使い分けを、正しく説明できる人はあまりいないかもしれません。
この記事では、「百姓」と「農家」の違いを分かりやすく説明していきます。
「百姓」とは?
「ひゃくしょう」と読みます。
現代では主に、農業や農作業する人をいいます。
古くからある言葉で、本来は一般の人民や公民をさす言葉でした。
農業従事者を想像する人が多いかもしれませんが、本来は漁業や商業など他の仕事をしている人々も含まれます。
納税者として認識された人々です。
しかし、実際には農業で生活している人が多かったので、百姓と農民は同義語へとかわっていったと考えられます。
また意味が転じて、あかぬけない、情趣を解さない人と、ののしる意味合いで使うときもあります。
「百姓」の使い方
「百姓」が使用される代表的な例文をみてみましょう。
・『歴史の授業で「百姓」一揆について、学びました』
・『祖父の話によると、私の先祖は水のみ「百姓」で、とても貧しかったらしい』
・『彼は、自分の教養はしょせん「百姓」読みだから、と自虐的にいいました』
「農家」とは?
「のうか」と読みます。
農業を営んで生計をたてる世帯のことや、またその家屋のことをいいます。
「農家」の使い方
「農家」が使用される代表的な例文をみてみましょう。
・『彼は、平日に教員として働き、土日は田畑をみている兼業「農家」です』
・『あの一家は祖父の代までは専業「農家」でした』
・『「農家」林業とは、「農家」が経営する小規模林業のことをいいます』
・『戦後の混乱期には、多くの人が「農家」に食べ物を求めて殺到しました』
「百姓」と「農家」の違い
それでは「百姓」と「農家」の違いを、改めて整理してみましょう。
「百姓」は農業従事者とは限りません。
他の職業に従事する人々を含む場合もあります。
農民というよりは、年貢をおさめる(米とは限らず、魚や織物なども含まれた)納税者としての意味が強い言葉です。
荘園所有者(寺院や貴族など)や江戸時代の藩主など、土地を持つ人々と反対の立場にある存在です。
一方、「農家」は、農業従事者の世帯のことをいいます。
年貢をおさめる庶民だからといって、他の職業の人は一切含まれませんし、納税者というニュアンスも持ちません。
あくまで職業の区分として使用される言葉です。
まとめ
この記事では「百姓」と「農家」の違いをみてきました。
どちらも「農業に従事する人々」を含む言葉で、私たちの歴史、経済、生活において欠かせない言葉です。
しかし「農業以外の人々も含むか、含まないか」、「納税者としての意味があるか」、「職業としての区分なのか」、「身分としての区分なのか」というニュアンスの違いがあります。
使い分けるときは、意味を正しく理解して間違えないようにしてください。