サイエンスの文献を読んでいると「沈殿」と「沈降」という専門的な言葉の意味に迷うことがあります。
この記事では、「沈殿」と「沈降」の違いを分かりやすく説明していきます。
正解を知って、科学の知識を深めていってください。
「沈殿」とは?
沈殿(ちんでん)とは、液体の中にまじっていた粒子が、瓶などの底にしずむ状態のこと。
何かと何かの物質を組み合わせたとき、液体に溶けきれずに残ってしまうことを沈殿反応と呼んでいます。
またこうして残った物質や固体のことを沈殿物といいます。
沈殿は中学や高校の科学の実験でつかわれる理科の言葉ですが、日常生活のさまざまなシーンで応用されています。
たとえば食品添加物を生成するとき、絵画用のパステルや絵の具を作るときには沈殿の方法がとられています。
また下水道の施設では沈殿池という「沈殿のための人工池」をつくり、水から小さなゴミなどを取りのぞく作業をおこなっています。
液体にまじっている特定の固体を取り出したいときに、沈殿は応用されています。
「沈降」とは?
沈降(ちんこう)とは、液体の中にまじっている粒子が、下に運ばれること。
このような科学の変化のことを、重力沈降と呼ぶこともあります。
このように特定の粒子が重力に引きずられて下に移動するのは、粒子と粒子の間に何らかの差があるから。
どちらかに密度の大きな粒子があると、その粒子が重力に引っ張られるようにして下降していくのです。
この沈降という仕組みを応用したのが、最近注目されている「免疫沈降法」です。
免疫沈降法をつかうと、新型コロナウイルスを検出できる抗原検査を手軽におこなうことができます。
沈降はとてもシンプルな科学の現象ですが、私たちの暮らしをバックアップしている重要な研究テーマです。
「沈殿」と「沈降」の違い
どちらも「沈む」という文字が入っているので、区別するのが難しいのが「沈殿」と「沈降」です。
あらためて「沈殿」と「沈降」の違いを、分かりやすく解説します。
・重力が関係するのが沈降
沈殿と沈降はどちらも、液体を混ぜたときにビーカーの下に固体の粒子が付着する現象のことを指しています。
バケツに入れた泥水を木の棒で混ぜたときに、混ざり切らなかった小石が下にたまることがありますが、このことをイメージすると非常に分かりやすいです。
沈殿と沈降を区別するときに大切なのが「重力が関係しているか」ということ。
重力が関わっている場合は「沈降」。
重力が関わっていない場合は、単なる「沈殿」です。
沈殿は固体がしずむ現象と、シンプルに抑えておくと良いでしょう。
ちなみに重力というのは、地球の自転と地球の引力が組み合わさって生まれる、大きな力のこと。
モノが引っ張られる力のことです。
重力の力を利用したものが「沈降」という科学現象になります。
まとめ
「沈殿」と「沈降」の違いを分かりやすくお伝えしました。
沈殿は液体に含まれる固体の粒子が、下にあつまる現象のこと。
沈降は重力の力によって、粒子が下に移動する現象のことです。
違いを理解して理科を正しくマスターしていきましょう。