「まごうことなき」について
「まごうことなき」と聞くと、いかにも昔の言葉のようですが、これは、今でも普通に使われる表現です。
「まごうことなき」の意味とは
「まごうことなき」は、「疑いようがない」という意味の言葉です。
漢字では「紛うことなき」と表記し、「『紛う』(まがう、間違える)ことがないほど」という意味で使います。
この「紛う」を「まごう」と読んで、この表記となっています。
「紛う」は、「紛いもの」(まがいもの、偽物)という言葉で使う「紛」という漢字の意味と一緒で、「偽物ではない」といった解釈でも使える言葉です。
「まごうことなき」の言葉の使い方
「まごうことなき」は、これは「正しく何かだ」といったことを言いたい時に使う言葉です。
「これは、まごうことなきダイアモンドだ」のような例を挙げると分かりやすいでしょう。
「これは疑いようがない(正しく)ダイアモンドだ」と言っており、先に挙げた「偽物ではない」という意味も充分に含んでいる使い方となっています。
「まごうことなき」を使った例文
「まごうことなき」を使った例文です。
意味が分かりやすい言葉なので、解釈に困るものはないでしょう。
「まごうことなき」の例文1
「これが、まごうことなき真実だ」
この「まごうことなき真実」という形は、ドラマで最後に犯人が追い詰められるシーンなどでよく聞く表現です。
疑いようのない真実という意味と同時に、「嘘ではない」というニュアンスがおおいに含まれています。
基本的な意味は全て一緒ですが、使い方によって解釈を多少変えられる言葉です。
「まごうことなき」の例文2
「あの作品は、まごうことなき本格ミステリーと言える」
疑いようのない本格ミステリーものだと言っている例ですが、このような使われ方では、その本人の”個人的な意見”が大いに入っていることがあります。
よって、それをそのまま信じてしまうのも少し考えものです。
「まごうことなき」の例文3
「世間でまごうことなき傑作だと言われる映画を見たが、正にその通りだった」
この「まごうことなき」は、そのように言った人の意見が大いに含まれると先に書きましたが、世間でそのような評判なのであれば、ある程度は信用できると考えていいでしょう。
「疑いようがない」という意味ながら、その内容の真偽は使う人次第だということを覚えておきましょう。
「まごうことなき」の英語と解釈
「まごうことなき」を英語にすると、“univocal”となります。
この言葉は、本来は「1つしかないので間違えようがない」という意味ですが、その「1つしかない」という意味をそれほど意識せずに、「(それだとしか)疑いようがない」といった意味で使われることも多いです。
よって、「まごうことなき」の英訳に適当な表現だと考えていいでしょう。
「まごうことなき」の類語や類義表現
「まごうことなき」と似た意味で使える言葉や表現です。
基本的な意味は一緒なので、あとは前後の文体や、好みの問題などで使い分けてください。
「論を俟たない」(ろんをまたない)
「まごうことなき」のような作りの言葉です。
「俟つ」(まつ、頼ること)と「議論」の「論」を使って、「議論に頼る必要もなく」という意味で使います。
それだけ「疑いようがない」と解釈でき、ほとんど同じ意味だと考えて構いません。
実際の形として、「論を俟たずに」という使い方ができます。
尚、「論を待たない」では誤用になってしまいます。
こちらの表現でも、「議論を待つ必要なく」などと無理矢理意味が付けられますが、このような表現はありません。
「火を見るより明らか」(ひをみるよりあきらか)
こちらも、「疑う必要がない」という意味の表現になります。
燃えている火の前にして、火がどこにあるのかと聞くより確かだという語源があり、「〜なのは火を見るより明らかだ」といった形で使われることが多い言葉です。